子供が多い世帯への児童手当の増額が発表されました。
“第三子” は高校生まで2倍となる、月3万円にするというものです。
しかし、その増額対象を巡って、”第三子” の扱いに関して誤解が既に多く生じているようです。
先日こんな会話からそのことに気付きました。
広まる誤解
「日本人の顧客に聞いたんですが、日本は子育て支援に積極的で、3人以上子供を産むと、高校卒業まで3万円もらえるようになったんですよね? その方も3人目を作るかどうか、早速検討し出したって言ってましたよ」
「あ〜 … 確かにそうなんですが、厳密に言うとそうではないんです …. 。」
「えっ?」
「3番目の子供はそのうち3番目じゃなくなるんですよ」
「どういうことですか?」
繰り上げ方式
現行の児童手当法では、我々日本人は高校を卒業した時点で児童ではなくなります。
そのため、”第一子” が高校を卒業すると …
・”第二子” → “第一子“
・”第三子(増額対象)” → “第二子“
へと繰り上がり、増額対象だった第三子の月3万円は元の月1万円に戻ってしまうのです。
児童手当は現在、
(第一子&第二子)
・0〜2歳児: 月1万5千円
・3歳児〜中学生まで:月1万円
(第三子)
・0歳児〜小学生: 月1万5千円
・以降中学生まで: 月1万円
が支給されています。
政府は2024年10月分から、第三子以降が対象の「多子加算」の “増額” や “対象拡大” を始める予定で、対象は0歳児〜高校生に広がり、支給額は2倍の月3万円になる予定です。
一見すると先程の外国の方の顧客(日本人)が言うように
「高校生まで月3万円!」
を受け取れそうな感じがしますが、実際にそうなる可能性は極めて低いのが現実です。
(現行の)児童手当法では、18歳の誕生日後の最初の3月31日を迎えるまでを児童とみなします。
そして、成人を迎え高校を卒業すると児童ではなくなります。
問題はここからで、第一子の高校卒業後は第二子、第三子が先述したように、第一子、第二子へと繰り上がるのです。
どうやら、2024年10月分(三人目増額)からも同様の考えが踏襲される見通しで、今のところ変更される予定はありません。
これは最も歳の差が少ない1歳ずつ離れた年子の3人兄弟であっても、第三子が月3万円を受け取れるのは高校1年生までで、第一子が高校を卒業すると月1万円に減額されるという次第です。
弱い政策
僕自身もこの制度を聞いた時、「はっ?」と一言だけ呟きました。子供を育てる誰もがそうなったのではないでしょうか?
日本経済新聞社によると、厚生労働省がまとめた「出生に関する統計」では、2019年時点での結婚から出生までの平均期間は第一子が2.45年、第三子は6.96年で4〜5歳離れているようです。
第三子としての増額3万円は平均的には中学生で終わり、高校卒業まで倍増となるのは、年百数十組の「三つ子」のケースのみで、高校生まで MAX 3万円受け取れる確率は相当低いでしょう。
この誰が聞いても「えっ?」となる政策、政府は “やったった感” を見せていますが、これこそが日本の少子化対策の弱さを証明しているのではないでしょうか。
まず、言わずもがな制度上の繰り上げ方式を、育児手当に反映させることは理解に苦しみます。
第一子が成人を迎えようが、親がお金を子育てに使ってきたという事実は変わらず、そしてこれからも子育てにはお金がかかるという事実も変わりません。
子を持つ親として僕自身の感覚では、
「児童手当はないよりは助かるものの、決して得はしていない(お金が増えているわけじゃない)、いや足りない」
これが現実です。子育ては生活必需品だけを見てもお金がかかります。
以前よりこのブログでも度々指摘する、”日本の大学の高額な授業料” を加味すれば、高校卒業以降が “お金のかかる本番” であり、それを懸念して子供を2人以上持てないという人が、少なくとも僕の周りにはたくさんいます(「3人目なんてとても … 」と)。
LINK日本の大学授業料が高い理由
そう考えれば、第一子が高校卒業すると支給額を減らすということ自体が、高校卒業以降のこと(子供の進学)で世の家計が困っているという事実を、この国の政治家・官僚が見て見ぬふりをしていると捉えられます。
さらに扶養控除の廃止などが盛り込まれれば、一体増額によって得をしたのか損をしているのか分からないことになり、「よし3人目を作ろう」となるわけもなく、この政策で少子化が改善されることはあり得ないでしょう。
それ以外にも物価、住宅価格の高騰など、子育て世代は今様々な問題に直面しているのです。