先日知人を介して、

「ストックホルムでスタートアップ関連のイベントに出席したいんですけど、出来るだけコストをかけずにコンスタントに参加出来るものってありますかね?」

とご質問頂きました。Stockholm Startup Ecosystem でご紹介したイベントや関連組織が提供するプログラムについてお伝えすると、

「もう少し学校講座のような、固定メンバーで受けるタイプのものはありますか?」

という要望だったようです。

彼自身英語は堪能で、大学院にもアプライしてもパス出来るバックグラウンドをお持ちでしたが、座学アントレに莫大な費用をかけたくないとのことでした。耳が痛いです。

・無料
・アントレ
・定期講座

というのはスタートアップイベントの多いストックホルムでもかなり稀です。たいていが単発のものか、長くても2〜3日を要するブートキャンプ的なものだからです。

しかし僕が今まで参加したものの中で、1つだけ条件を満たすものがありました。それは僕が校外で初めて参加したスタートアップ講座でもありました。

Stockholm+Acumen の ソーシャルアントレコースです。



Acumen

Acumen は貧困解決に取り組む NPO 団体ですが、そのミッションを企業、人、アイディアに投資することで、方法自体を変えてしまうことに重きを置いたベンチャーキャピタリストです。2001年、The Blue Sweater という伝記の著者 Jacqueline Novogratz 氏によって設立されました。

*The Blue Sweater は世界の貧困やその解決策を見つけるために旅したある女性に関する自叙伝です。

彼女は解決が困難とされる様々な世界問題(スラムの貧困、未婚マザーの生活、ルワンダジェノサイドのスーパーバイザーなど)に取り組む中で、伝統的なチャリティ活動の多くが失敗に終わることに気付いたようです。しかし、新たな形式の慈善投資活動 “Patient Capital Investment(寛大な目で見守った資本投資)” が人の自給自足精神を高め、うん百万人の生活を変えることを悟ります。

この The Blue Sweater という本は貧困にどう取り組んだかを語った自叙伝という域を越え、

「読み手に貧困層の人々の尊厳を理解し、世界との触れ合い方についてもう1度考える機会を与えた」

と世界中の愛読者から賞賛されました。

Acumen はこれまでアフリカからアジア、中米、北米にわたる100以上の企業に1.1億ドル 投資してきました。現在もそのグローバルコミュニティの発展に力を入れ、より良い排他的でない世界を作るために、次のリーダーの育成(知識、スキル、決断力向上)に力を注いでいます。

その結果、2015年にFast Company’s Top 10 Most Innovative Not-for-Profit Companies に選ばれる、世界を代表するソーシャルビジネスに特化した NPO 団体となりました。

Stockholm+Acumen

Stockholm+Acumen はその名の通り Acumen のグローバルコミュニティの1つで、Acumen 本部の取り組むチャレンジにともに取り組むことを目的とした支部です(ちょっと変な言い回しの理由は後で説明します)。

Stockholm+Acumen は2014年、 インパクト投資とソーシャルアントレプレナーシップは世界を変えるのに不可欠だという Acumen のビジョンに共感したボランティアによって設立されました。

ストックホルムでは無料のソーシャルアントレ講座を開設し、有志を集め様々な社会問題を議論し答えを見出そうとする活動を行なっています。

先ほどあえて変な言い回しをしたのは、 Stockholm+Acumen がボランティメンバーから構成されており、講座を率いるメンバーはフルボランティア(お給料が支払われない)でソーシャルビジネスを学ぶ重要性やそこには必ず投資が必要になるという Acumen の哲学を伝える活動に従事しています。

ゆえに Stockholm+Acumen の活動はベンチャーキャピタルとしての投資事業ではなく、教育に重きを置いた活動となっています。


フリーコース

Stockholm+Acumen は様々なソーシャルアントレコースを設けており、コースに沿った上記のようなビデオ教材を参加するセッションの前に見て、ディスカッションに備えるという手順でした。

セッションの間はソーシャルビジネスについて教える → 学ぶというよりそれについて考える作業(ディスカッションや討論)で、いろいろなケースが用意され毎回それについて2時間程度取り組みました。

その後、レポート形式のアサインメント(宿題)が送られてきて、それを次回セッションまでにファシリテーターに提出、フィードバックをもらうという流れです。

コースは1セッション2時間でそれが定期的に4週間続くものですが、僕個人の印象としてはそんなにインテンスなものではなく、ディスカッションもラフでモチベーションの高い人もいれば低い人もいるという雰囲気でした。

ネットワーク作り

Stockholm+Acumen に参加する多くの人はソーシャルビジネスに関心のある人達です。彼らとの会話はやはり他のスタートアップイベントで交わすものとは少し異なり、問題解決に純粋に取り組む姿勢が討論していて心地よかったです。

(もちろん、事業として現実性があるかどうかファイナンスの面でも議論します。)

一方で、ここで出会った人達とその後他のスタートアップイベントで再開することもしばしばで、自分のネットワークが広がった要因の1つでもありました。

Acumen の講座はソーシャルビジネスの聖地 Impact Hub で行なわれるため、多くのソーシャルアントレプレナーに出会う機会になるかもしれません。