新型コロナウイルス問題が世界に暗い影を落とす中、ポスト・コロナ(コロナ終息後)の世界経済についても、学者によって議論され始めています。

あまりにも複雑な内容(政治、経済、グローバリゼーション、デジタル、地政学、財政、etc が入り組んだ)で、気づけばうたた寝しかけてしまいますが、やはり主軸にあるのは2つの強国(アメリカと中国)だと僕は捉えています。

今後、世界が中国に対して賠償請求をしようが、それが意味をなさない結果になろうが、いずれにせよ中国に対して “腹を持つ” 形で、この大国に対するポジション取りが必要になってくるからです。

そこには、

  • 中国に新型コロナウイルス蔓延の賠償をさせたい
  • これまで通り中国で自国企業を稼がせたい

という矛盾が存在しますが、どちらを優先して向き合うかは国によってバラバラ。

しかし、もう1つの大国アメリカのスタンスは「必ずお金でケリをつける」というのが、トランプ大統領の発言や過去の実績(2019年の追加関税)からも容易に予想がつきます。

昨年のような関税の引き上げ合戦がまた起きてしまうのか? はたまた米国大統領選でトランプ氏が敗れ中国とアメリカが歩み寄るのか? 成り行きに任せるしかありませんが、先行きが非常に不安定であることは誰の目にも明らかです。

 米中貿易摩擦

日本電産の永守 CEO は米中貿易摩擦による業績の下方修正を「経験したことのない落ち込み」と表現。

このコロナ禍が始まる1年前の2018年末、多くの国内製造業者が業績の下方修正を強いられました。米中貿易摩擦問題によるものです。

「アメリカファースト」を掲げる米トランプ大統領が、中国に対して輸入品の追加関税を仕掛ける。それに対し中国が報復措置として、アメリカからの輸入品に追加関税を仕掛ける。

追加関税応酬は第4弾まで続き、米中貿易戦争の影響が日本企業の業績にまで飛び火する格好となりました。

昨年は僕自身、この米中貿易摩擦の影響や成り行きのシナリオについて、海外の方と議論することが何度もありました。

そして、その際必ず話の流れで行き着きついた先が、1960年代からこの国でも起こった日米貿易摩擦についてでした。



 日米貿易摩擦

Photo: 1970’s in the U.S/ Photo: LELAND BOBBE

第二次世界大戦の敗戦国として、日本が繊維・軽工業から重工業へと技術革新を進め、戦後の経済復興に成功したことはこのサイトの別ページで詳細にご紹介してきました。

LINK英語で日本経済史

日本の国際競争力の強化によって、アメリカに大量の日本製品が流入。1965年以降に日米間の貿易収支が逆転し、アメリカの対日貿易が恒常的に赤字になりました。

そして、現在のアメリカ – 中国間のように、アメリカで一気に嫌日の雰囲気が高まり、

  • 1960年代後半:繊維製品
  • 1970年代後半:鉄鋼製品
  • 1980年代  :電化製品、自動車

で貿易摩擦が起こりました。アメリカ人が日本車をひっくり返してフルボッコしている当時の様子は、よくニュースなどでも目にします。

その後、日本経済はバブル崩壊を経験し、失われた10年、20年、30年と、IT 産業などで完全復活を遂げた米国と比較され、失敗例として語られることが多いです。

しかし、日本がどうしてアメリカを(一時は)追い抜いてしまったかについてはよく説明がされていますが、その後アメリカがどのように日本を再び抜き返したかについては、意外と詳細に歴史的背景が語られている書物は少ないのが事実です。

そんな中、数ある経済書や経営書の中で、そのアメリカの90年代以降の経済復興について、最も詳細に分かりやすく解説されているのが、*ターンアラウンドスペシャリストとして名を馳せた三枝匡氏の「V字回復の経営」だと僕は思っています。

【増補改訂版】 V字回復の経営―2年で会社を変えられますか

 日米貿易摩擦後のアメリカ

三枝匡氏はこれまでプロ経営者として、重機メーカー小松製作所(KOMATSU)の再建や、ミスミグループの高成長を実現。母校の一橋大学でも基金を設立し、客員教授として人材育成に努めてこられました。

そんな三枝氏の「V 字回復の経営」は同氏の「経営パワーの危機」と並び、何度も重版や増刷されるほど評価の高い小説形式の経営書で、ビジネスパーソン必読だとも言われています。

時代は劇的に変わりましたが、それでも企業人として生きてく上で役立つ内容が多くかつ非常に読みやすいので、一度手に取られることを強くお勧めします。本当に読んでおいて損はないです。

【増補改訂版】 V字回復の経営―2年で会社を変えられますか

【日経ビジネス人文庫】経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ

【日経ビジネス人文庫】ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

そして、その「 V 字回復の経営」には、小説の合間合間に「経営ノート」と呼ばれる、ストーリーを経営理論や歴史的背景から解説していく箇所があります。

この経営ノートの部分に、先ほど触れた貿易摩擦後のアメリカの復活についてが詳しく説明されており、僕は海外の方と貿易摩擦について話す際、どのようにして日本が負けアメリカが蘇ったのかを “拝借して” 説明させてもらっています。

座学面で経営リテラシーを高めるのに非常に役に立ち、そしてシンプルに面白い。ボストンコンサルティンググループ日本採用第1号として、本国アメリカでその衰退と復興を目にした彼でしか語れない内容となっています。

僕自身北米やヨーロッパに住んでいた大学院時代には、ウンチクとして人と話す際には非常に役立ちましたので、

  • 三枝匡氏の V 字回復の経営・三枝匡の経営ノート3「アメリカの「経営の創造性」に負けた日本

の英訳文を公開したいと思います。

これから海外に留学する方、もしくは日本で外国の方々と議論する機会がある方、うんちくを披露してやって下さい!

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