これまでスウェーデンのアントレ(Entrepreneurship)プログラムに関しては、僕が修業したウプサラ大学について一つ一つのコースがどんなものだったのかをお話してきました。

LINKウプサラアントレ

またその序盤編として、他大学についても様々な組織で知り合った人達から聞いた話を共有しました。(KTH, Chalmers, Calorinska, Lund)

その際ルンド大学については、「今現在考えられるこの分野での(スウェーデン)トップ校」として、また別口でお話すると触れました。

今日はその Lund University MSc Entrepreneurship and Innovation についてです。

ちなみにこの記事は僕がルンドに2回挑戦するも叶わず、「自分には手の届かない高嶺の花だったの♡」と憧れの先輩男子を想う少女漫画的なノリで書いたものではないです。

客観論的にルンドだろうという僕の考察です。

Lund University MSc Entrepreneurship and Innovation

まずいくつかの事実に触れていくと、

  • スウェーデンで最初にアントレを修士の1プログラムとして開始したのは Lund
  • スウェーデン国内の全修士プログラムの中で、志願数がずっとトップクラス(Top 5入りも何度か)
  • プログラム自体にスポンサーが付いている(国内で最も予算が豊富なアントレプログラム)
  • 国内最大規模のイノベーションセンター IDEON がルンドを拠点としたこと
  • 学内初のスタートアップ企業の数が、国内のアントレプログラムの中で最も多い

などなど、他にも色々な重要ファクトがあるのですが、順にご説明していきます。



国内初と国内トップ

Lund のアントレプログラムの歴史は2012年に遡ります。

今でこそ Lund のアントレは国内の全修士プログラムの中で最も志願数&競争率が高いプログラムと認識されていますが、開講当時アントレはまだ 欧米 MBA の1科目として一般的に認識される程度でした。

ではどうして Lund は国内でいち早く単一プログラム化に舵を切ることになったのでしょうか?Lund がそのような先見性のあるアクションを取れた要因はいくつかあるようですが、大きな2つとして

  • 同校出身で国内でも有名な起業家&企業経営者 Sten K Johnson 氏が、長年ルンド大学と学生のベンチャー活動を金銭面などでサポートし、起業の重要性を訴え学生を鼓舞していたこと
  • イノベーション創造を目指した国内最大規模のサイエンスパーク、IDEON が2011年にルンドにオープンしたこと

が挙げられます。

(ちなみに開講後数年間は “Corporate Entrepreneurship” と “New Venture Creation” という、2つの異なるトラックに別れていました。現在は1つに統一されているようです。)

【99%の失敗が潰せる】起業の科学 スタートアップサイエンス

Sten K Johnson

プログラムにスポンサー?

アメリカなどの有名大学では、卒業生が母校へ資金援助をし、それが様々な研究分野へ割り振られるという流れはそれほど珍しい話ではないようです。しかしスウェーデンではそれは割と稀というか聞いたことがありません。

一般的なスウェーデンの修士プログラムは、学校からおろされた予算を元に、プログラムの内容を構成します。

逆に言えば学校からおりる予算が少なければ、学内イベントを催したり、生徒のハンズオン経験のための課外活動などをキャリキュラムに組み込めない、”大人の事情” があるとウプサラの教授は教えてくれました。

そういったプログラムの活動制限をなくすには、やはりお金がかかるものですが、ルンド大は同校出身の Sten K Johnson 氏(起業家&複数企業経営者)のサポートにより、様々な活動を提供してきました。

Sten K Johnson Foundaiton によれば、Sten 氏は同校の MBA in Finance をとった卒業生にあたります。彼のキャリアは非常に異質で、Trelleborg AB や Sonesson などの大企業から、Shareholders’ Association の会長、Skåne Gripen 役員(1979)、現在株式市場に上場しているコングロマリット企業 Midway Holding の創業、経営を亡くなる2013年まで担っていました。

さらに Tibia Konsult という関連企業の株式を保有する企業も経営し、ルンド大出身の著名人で最も有名な人の1人で、長年同校を様々な面でサポートしてきました。

2011年、2,000万スウェーデンクローナを起業活動の促進名目でルンド大に寄付。そしてルンド大はその資金を元に国内初の修士課程アントレプログラム開講を決め、Sten K Johnson Center of Entrepreneurship と名付けることの承諾を彼から得ました。

ちなみに Sten 氏は Connect Skåne という組織を立ち上げ、 “Uppstart Malmö”, というスウェーデン国内でも高い失業率を解決するために、マルモ市に新たなビジネスを誘致するプロジェクトにも参画しました。

2012年、Tibia Konsult が所有していた4億スウェーデンクローナに相当する企業の株式を元手に、 Sten K Johnson Foundation を設立しました。

Sten K Johnson Foundation はさらに Sten 氏個人が所有していた資産をその後引き継ぎ、毎年社会貢献活動する人々に補助金を提供するようになりました。

その結果、The Royal Patriotic Society Enterprise Medal という栄誉を受け取り Lund University School of Economics の名誉博士に任命されたのでした。まさにレジェンド。

当然、Sten K Johnson Foundation は Sten K Johnson Center of Entrepreneurship を通じ、ルンド大アントレプログラムにも活動援助を行ない、結果として国内で最も予算を持ったアントレプログラムとなりました。

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