生活・ビジネス環境の水準が高かったオランダ(アムステルダム)をあとに、キャリアツアー一行は3ヶ国目のアイルランド(ダブリン)に到着します。

ダブリンでは半日企業訪問、残りは観光という日程が3日間続き、どうやらパブの本場(アイリッシュパブ)で飲み明かすことが本当の目的のようです(?)。

ダブリンでは Linkedin、Google、Oracle と世界有数のテック企業を訪れる予定ですが、これらは事前アンケートで最も楽しみにされている企業訪問でした。

早速1発目の Linkedin についてレポート、にいく前に少しアイルランドについてお話したいと思います。なぜアイルランド?とお思いの方もいるのではないでしょうか?



グローバル企業の集積地アイルランド

アイルランドはイギリス領土であること以外に、ヨーロッパではもう1つ経済上重要な意味を持つ国であり、非常に論争を巻き起こしている国でもあります。

アイルランドは2010年に起こった不動産バブルの崩壊により、多くの都市銀行が不良債権を抱え、それらの救済措置のため、一旦は深刻な景気後退を経験しました。

銀行セクター救済などを理由に、EU や IMF に支援を要請し、850億円ユーロの金融支援プログラムが施されるなど、ギリシャ同様国の破綻も懸念されるほどだったようです。

その後、財政改革や労働市場の規制緩和、銀行業の業績回復などを経て、2013年に金融支援プログラムを脱却しました。

近年では、法人税率が低いことなどを理由に、多くの外資系企業がこの国に欧州拠点を新設し、結果として多くのグローバル企業が名を連ねる経済の中心と化しました。(Sourse: REUTERS)

タックスヘブンアイルランド?

では何がコントロバーシャルなのかと言いますと、法人税率の低いアイルランドに拠点(ペーパーカンパニー含む)を新設したグローバル企業は、本来(本社のある)自国で納めるべき税金の一部をアイルランドに納める、”租税回避” を行なっていたことが判明しました。

例えば Apple は約90億ドルをこの手法で租税回避されたとして、同社ティムクック CEO がアメリカ上院の公聴会に呼ばれました。最終的には法律上問題がなかったと結論づけられましたが、今度は EU(欧州委員会)から新たな疑義が。

Apple がアイルランドから受けた税の優遇は、EU 法に照らし合わせた際には違法であり、追徴課税に利息を加えた、143億ユーロを EU 側に支払わなければならないと訴えられたのです。

EU が発表したAppleの租税回避のカラクリに関するプレスリリース

Apple 以外にも多くのテック企業が同じ手法で租税回避を行ない、今なお、企業、アメリカ、アイルランド、EU の4者間で揉めている状況にあります。

しかし、これが租税回避かグレーゾーンかはさておき、法人税率の引き下げでグローバル企業を誘致し、経済を活性化するアイルランドモデルは、1つの成功例として認識されるようになりました。

結果として、ヨーロッパ各国の間で法人税率引き下げ合戦が始まったのです。こちらが現在のヨーロッパ諸国の法人税率です。

フランス   33.33%
ポーランド  29.0%
イタリア   27.5%
オランダ   25.0%
スウェーデン 22.0%
イギリス   20.0%
ドイツ    15.83%
アイルランド 12.5%

ヨーロッパでも群を抜いて低い法人税率のアイルランドは、こうしてグローバル企業の呼び込みに大成功しました。実際これまでアメリカ企業700社以上を誘致し、14万人の雇用を生み出す効果もあったようです。


Linkedin Dublin

そんな Linkedin もアメリカが誇るテック企業(現在は Microsoft 傘下)で、ヨーロッパでは Ireland に拠点を構え、幅広くリクルート活動に従事しています。

スウェーデンでも就職活動に Linkedin がよく使われるため、こちらの訪問を1番楽しみにしているというメンバーも多かったです。

加えて、Linkedin Dublin と Uppsala University は何か縁があるのかな?、というくらいウプサラ出身生が多数こちらで働いています。

この写真中央の Linkedin 男性スタッフも、僕の1つ前のウプサラアントレ出身生です。クラスメートも1人こちらの Linkedin に就職しました。ちなみにもう1人知り合いがこちらで働いています。

ヨーロッパでは就職や転職でコネ(コネクション)が非常に重要だという印象を僕は持っています。ウプサラ大出身の Linkedin スタッフが卒業生を優遇しているとは思いませんが、この学校の卒業生であれば大丈夫だということを仕事面で証明しているのかもしれません。

Linkedin スタッフによる Linkedin プロフィール指導

Linkedin 到着後まずは簡単な自己紹介を行ない、事業説明へ。

単純に CV(職務経歴書)を Web 上にアップさせ企業とつなぐプラットフォーマーの役割だけではなく、転職者向けのリクルートサービスなど、事業分野が急拡大しているようでした。

実際欧米の転職市場では、Linkedin を通して次の転職先が決定したケースが、過去数年で爆発的に伸びているようです。

日本ではまだまだリクナビなど、内資系企業の存在界が強いですが、欧米企業の間では Linkedin でキャリアのバックグラウンドを確認することが当たり前になってきているようです。 

話を聞いた Linkedin スタッフのロバート氏曰く、マーケットシェアと認知度の低い日本市場は非常に魅力的で、今後数年間かけて特に力を入れていくマーケットだと説明がありました。

彼らが算出したアジアでの市場シェアが、非常に低かったのですごく驚いたのを覚えています。僕自身もここ数年、Linkedin を通して企業側からコンタクトをいただくことが多くなりましたので、もう少しあるのかな?なんて思っていたからです。

Linkedin としてはこれからアジアを攻めるのに逆にやる気が出ますね。そしてこれから欧米で就活をする方、Linkedin は絶対に必須のツールです。

さて、この日就活を控えた Career Tour メンバー向けに、Linkedin スタッフから “良い Linkedin ページの作り方” を直接指導される機会がありました。

こちらはまた別の機会に詳しく。



テック企業の福利厚生

Photo Credit by Edelman

Linkedin でのスケジュールを終えた後は、おまちかねの昼ごはん。本日は Linkedin のカフェテリアでご馳走していただけます。

カフェテリアに行くまでの道のりで、ちょろっと施設の紹介をされたのですが、さすがアメリカ発テック企業。洗練されたオフィス、ジム、フィットネス教室、カフェと様々な福利厚生が従業員のために与えられていました。

Photo Credit by Edelman

それ以外にも飲み物や軽食(お菓子やチョコレート、プロテインバーなども)が無料で取り放題と、Linkedin 従業員は日々の生活に家賃以外コストがかからないようです。

委員長のキムも「おい、スナックとチョコポケットに詰めるだけ詰めとけ!」と、不自然なほど膨れ上がったジャケットのポケットを終始気にします。

Photo Credit by Edelman

当然ランチメニューも豊富で、僕にとっては Linkedin の社食が、スウェーデンに到着して以来最も豪華な食事となってしまいました。大げさじゃなくこれを毎日無料でランチすると、金銭感覚や体重の維持が困難になると感じました。

テック企業特有の福利厚生ですが、これも「富める者はますます富む」1つの現象かな、と内資系企業でしか働いたことのない僕は思うのでした。

Linkedin で働く

Photo Credit by Edelman

Linkedin Dublin の採用プロセスも NIKE 同様、まずは半年間の適正を測るプログラムに参加する必要があるようでした。特別な Linkedin 候補生プロジェクトのようなものに参加し、そこでチームワークやリーダーシップを発揮することで、次の採用ステップへ進み正式に社員となる、という内容のビデオを見ました。

多数のウプサラ大生がこちらで働いていることからも、ヨーロッパで就職を希望する方は Linkedin で働けるチャンスはおおいにあるのではないかと思います。

現地で何名かの社員さんと話をしましたが、社内は風通しが良さそうで、またヨーロッパ中を飛び回って仕事をし、充実感に溢れている様子でした。

興味のある方は是非 Linkedin チェックを!