スウェーデンに滞在中、大学院の活動や、所属していた Startup Incubator のイベントを通し、たくさんの起業家と話す機会がありました。

僕が行く前からすでにスウェーデンに魅了されていた理由3でも触れ、実際彼らと話して感じたことは、本質的にスウェーデンという国が、全ての人に起業し易い環境を提供しているということでした。

僕が出会った起業家たちは、首都近郊だけでなく、反対の場所に位置する西側や南側の人も多かったので、ストックホルムという都市区切りでなく、スウェーデンという国単位でそういった実態があると言えると思います。

そしてこれは単純に国が規制改革や、起業プロセスの簡略化だけで実現したものではなく、失業時の国のセーフティーネットやサポート等、様々な要素が複合的にこの社会を作り出しているのだと感じました。

それでは実際にいくつかのファンファクトを見ていきましょう。



ビジネスに最適な国の1つ

2016 Ranking

2017 Ranking

Forbes が2016年に発表した Best Countries for Business で、スウェーデンは1位を獲得しました。2017年のランキングでも4位につけ、そのビジネス環境の良さがうかがえます。

しかし、実は2006年のランキングでは17位と、先進国の中でもパッとしないポジションに甘んじていました。

過去10年にこれだけ飛躍的に順位を伸ばせた主な理由は、相当な規制緩和を様々な産業で行なってきたことにあり、結果として国外からの投資が活発化し、国全体が経済発展を遂げることに成功したことが挙げられます。

先ほどの2017年の Forbes のランキングを見ると、

GDP成長率:3.2%
1人あたりのGDP:$51,600
貿易収支:4.5%
人口:1,000万人

と、少ない人口にもかかわらず、高いGDP成長率と貿易黒字を実現していることが分かります。さらに、1人あたりの GDP も、Top4の中でずば抜けて高く、非常に効率的に経済活動を行なっています。

逆に何で1番じゃなかったのでしょうか?

イノベーションリーダー

European Commission が毎年発表している “European Innovation Scoreboard”で、スウェーデンは過去3年(2016、2017、2018)連続で1位に輝いています。

イノベーションを起こすポテンシャルの高い技術には、国をあげておしげもなく投資を行なう風土があるようです。

実際、スウェーデンは Skype、 Volvo、 SAAB、 Ericsson、 Electrolux、 IKEA、 H&M、 Pharmacia、Astra, Spotify など、多くのユニークな技術やビジネスモデルを持ったグローバル企業を生み出してきました。

これ以外にも Daniel Willington(時計、ジュエリー)や、ファッション分野でも多くの企業がグローバル展開を実現しています。



テックハブへの進化

近年この投資は特にテック系スタートアップに集中投下され、Nordic Web の調べによれば、

140億ドル → 54%

(2016年、140億ドルがストックホルムベースのテック企業に投資されました。これは2015年比で50%も増えたことになり、さらに全北欧で投資された額の54%も占めたことになります)

 

247 → 35%

(2016年、247のストックホルムベースのテック企業が資金調達に成功しました。これは全北欧で資金調達に成功したテック企業の35%にあたりました)

その結果、ストックホルムは人口あたりのテクノロジースタートアップ企業創出数で、アメリカ・サンフランシスコに次いで2位になりました(2016 the Nordic Web 調べ)。

近年、ヨーロッパでは、ストックホルム=テック系スタートアップの聖地として認識され、多くの IT 技術者や、テックフィールドで起業したい人が、チャンスを求めて集まる場所となりました。

現在、ストックホルムだけで20,000を超えるスタートアップ企業が存在します。



 

  • Silicon Valley: 63 Unicorns
  • Beijing: 23 Unicorns
  • London: 17 Unicorns
  • New York: 11 Unicorns
  • Stockholm: 7 Unicorns (Skype, King, Spotify, Klarna, Avito and Mojang)
  • Berlin: 4 Unicorns

スタートアップエコシステムの拡充

コーワーキングスペース&インキュベーター
SUP46(2013)、Knackeriet(2014)、Epicenter(2015)、Things(2015)、H2 Health Hub(2016)、Stockholm Fintech Hub(2017)、WeWork(2019)

スタートアップイベント
Sthlm Tech Meetup(2013)、STHLM TECH FEST(2014)、Symposium(2015)

スタートアップ関連メディア
#sthlmtech(2013)、Swedish Startup Space(2014)、breakit(2015)、DI Digital(2016)、#movetostockholm(2016)



ストックホルムのスタートアップシーンが激熱なもう1つの理由として、彼らをサポートするエコシステムの拡大を忘れてはいけません。

ベンチャーキャピタル、インキュベーター、アクセラレーター、コーワーキングスペース、教育機関、エンジェルネットワークなど、サポーターの数がここ数年で劇的に増加。さらに元々

スタートアップ ⇄ 各サポート機関

という個々の関係だったものが、プロジェクトやイベントを通し、スタートアップのサポーター同士がコラボしたり強い結びつきを持つようになりました。

そこに大学や、政府機関内のベンチャーサポーターが手を貸したりと、文字通り産官学でストックホルムのベンチャーシーンを盛り上げようと取り組みがなされてきました。

その結果として、強固なスタートアップエコシステムが形成されたのでした。

僕は度々スタートアップ系のイベントに出入りしていたので、このあたりは実際に目で見て、肌で強く感じていました。

本当に盛り上がりが凄いのと、競争競争で誰かを蹴落とすのではなく、「全体的にボトムアップしようぜ」感が強かったです。

現在スウェーデンで最も主要とされているセクターは、フィンテック、Eコマース、ヘルス&フィットネス、メディア、セールス&マーケティング、そしてリクルートメントと定義されています。

これからもっともっとこれらのフィールドに、資金が投入されていくことが予想されます。

LINKStockholm Startup Ecosystem

1時間もいらない開業手続き

そしてスウェーデンの起業家精神旺盛な文化を語る上で欠かせないのが、起業(開業)手続きの簡素化が徹底して行なわれている点です。

つい最近開業したスウェーデン人の友人 Corada さん曰く、「起業に必要な手続きは1時間以内に完了出来るよ。しかもネットで。多分慣れたら30分。」

とのことです。以前までは国が運営する企業登録専用ホームページで、申請書を印刷する必要があったそうですが、近年は全てを起業専用アプリで完結することが出来るのだとか。さすが IT 先進国。

アプリで登録作業完了後、申請が受理された通知が届き、登録料を支払うと晴れて商売がスタート出来るそうです。文字通り片手間で起業出来てしまうのがスウェーデン社会のようです。



将来不安がないこと

また現地で出来たスウェーデン人の友人と過ごすなか、僕がずっと感じていたことは、大企業への就職志向が彼らは低いということでした。

日本では大企業勤めする理由は、(もちろん人によって異なりますが)やはり金銭的安定を求める方が多いことが挙げられると思います。

これは単純に給料・ボーナスだけでなく、社会保険等の福利厚生面で安定しておきたいことがあるかと思いますが、スウェーデン人はこの点を考慮する必要がそもそもありません。

なぜか?これは 僕が行く前からすでにスウェーデンに魅了されていた理由4 でもお話ししましたが、国が社会保障を一元管理しているため、大企業で働こうがベンチャー企業で働こうが、働く先の規模で受けられる社会保障の内容が変わることがないからです。

さらに教育が文字通り無償で提供されているため、日本やアメリカ、その他先進国のように学生ローンの返済に苦しむ人は皆無。

つまり、将来心配することが金銭的にそもそも少ないため、何かにチャレンジし易い社会環境がそこにはあるのです。

当然失敗しても日本のように全てを失うことはありません。

経済的側面と、社会的側面がバランスを保たれていることが、スウェーデンを起業聖地に変貌させたのかもしれません。

社会が若者を応援しようとする文化

もう1点僕が直感的に感じたことは、社会(=高齢者から中年層含め)が若者を理解しよう、応援しようとする風土がスウェーデンには根付いているということです。

一度街中で大はしゃぎする若い人々を見たときに、

「私たちも同じように青春時代を楽しんだのだから、彼らも度が過ぎるぐらい今を楽しむべきなんだよ」

と語る50代くらいの男性女性グループと出会いました。「自分達が受けた恩恵(自由に生きる権利)を、今の若者達が受けることは当然だ」と理解を示す立ち居振る舞いに、非常に感慨深いものを感じました。

居酒屋で「今の若い者達は ….、俺たちの若い頃は ….」とお説教をする場面を日本ではしばしば目撃することがありますが、これは世代間でお互いの状況が理解出来ない典型的な例であり、スウェーデンではあまりこのような議論は見られません。

結果として、若者が社会を動かすギアのような役割を担い、また彼ら自身も「社会は若者の声に耳を傾けている。そして、声を上げれば世の中は変わる。なぜなら大人が背中を押してくれるから」と信じているため、思い切った行動に出ることが出来るのだそうです(ウプサラでお話した高校生)。

LINK【子供も起業する国スウェーデン】Company Program とは!?

実際にスウェーデンでは、学生が起業するプログラムも教育の一環として盛り込まれており、若いうちから様々なことにチャレンジ出来る、何かに挑戦すること自体の大切さを学べる環境が整っているのです。

*ストックホルムのスタートアップエコシステムに関するページを設けました。もしよろしければお立ち寄り下さい。↓↓↓

LINKStockholm Startup Ecosystem