今年に入り、日本とワーキングホリデー協定の署名がなされ、来年夏からは期間限定で羽田⇄ストックホルム直行便(ANA)が就航予定と、ますます距離が近くなっていくスウェーデン。

特にワーホリに関しては、どのような職業に実際日本人が就くことが出来るのか気になるところです。

仮に安定した職に就けなくても、単発で請け負えるギグエコノミー系の仕事はスウェーデンでも浸透しているので、アンテナさえ張って入ればなんらかの収入は得られるのではないかと個人的には考えています。

今日はそのギグエコミーの仕事が、スウェーデンで生計を立てるのに十分な収入を生み出してくれるのかどうかについてのお話です。



Gig Economy

ギグエコノミー(Gig Economy)とは、インターネットを通じて単発で仕事を請け負う働き方、それにより形成される経済圏の総称で、インターネットの進化から近年では世界中で広がりを見せています。

ギグエコノミーの例として筆頭に挙げられるのが、Uber の運転手や Uber Eats の配達員などですが、スウェーデンでも街を歩けば、巨大な四角いバックパックを背負ったマウンテンバイクをこぐ人をよく見かけます。

フードデリバリーサービスの配達員ですね。

よく見ると Uber Eats だけでなく、日本では聞いたこともないような会社の名前があっちにもこっちにも。市場の伸びと競争が熾烈なことがひしひしと伝わってきます。

実際、配達可能なレストランには、デリバリー会社のフラッグがディスプレイされるのですが、こっちは Uber Eats、隣は別会社、その隣はまた別のサービス、と同じ地域内でも異なるデリバリーサービスを採用しているようです。

3大プレイヤー

スウェーデンのフードデリバリー業界は、主に3つのプレイヤーが国内ではしのぎを削っています。いずれもアプリを使って配達作業をこなす仕事で、サービスの中身に違いはありません。

Uber Eats

今や流通総額80億ドルにまで成長した、フードデリバリー業界の巨人。世界中でサービスを展開し、スウェーデンでも全国展開中。

Foodora

ドイツ発祥のフードデリバリーサービス。スウェーデンではウプサラなどの郊外の都市から攻めていた印象が強い。ヨーロッパだけでなくカナダも攻略中。

Wolt

フィンランド発祥で、創業者はあの有名なテックカンファレンス SLUSH の CEO であることから、北欧では大注目を浴びた。北欧、バルカン半島、東欧などを中心に攻略中で、地理的戦略で強豪とは距離を置く。今現在この手のサービスで Ratings(満足度)が最も高い。

配達員は実際儲かるのか!?

ある日、居候先のアパートの前にあるベンチで、Foodora のヘルメットをかぶった青年が、うなだれるように下を向いていました。

「あれやばくね?」

と思い、近づいて「大丈夫?」と声をかけてみました。実際にはただ携帯を見ていただけだったんですが、その生気のなさから疲れ切っていることは明らかでした。

僕は前からこのフーデリサービスが、割りの良いバイトかどうかが気になっていたので、思い切って収入について聞いてみました。王立工科大学(KTH)の大学院生アーメッド君(インド人)です。

 

ーーー大丈夫?かなり疲れているみたいけど。

アーメッド君:そうだね。疲れているというより、今は手持ち無沙汰な感じで逆にしんどいね。結構次のデリバリーまでに時間が空いたりすることが多いんだ。

ーーーぶっちゃけこういうフードデリバリーの仕事って儲かるの?

アーメッド君:正直全然割りに合わないよ。丸一日費やして数百クローン(日本円で数千円)になるかどうかだね。とにかく待機時間が多くて時間を無駄にする比率の多い仕事だから、暇ですることが全くない日だけ配達員やってるよ。

自転車だとやっぱり効率も悪いから、スクーターとかの方がよく稼げるみたいだよ。まぁ、これで生計を立てるとかは、生活費の高いスウェーデンでは不可能だね。

 

やはり予想通り、そこまで割りの良い仕事ではないみたいです、スウェーデンでも。



スクーターで目指せ高収入!?

アーメッド君に別れを告げ歩き出した5分後、なんと公衆便所前にスクーターで Uber Eats をデリバリーしている(であろう)人を発見。

トイレから出てきたところを間髪入れずいきなり話かけてみました。間髪入れなさすぎてめっちゃビックリされました。すみませんが名前は聞いたのに忘れてしまいました。

 

ーーーすみません、突然。さっき foodora の配達員さんが「スクーターでデリバリーしている人は結構儲かっている」みたいなこと言ってたんですが、本当にそうなんですか?

Uber Eats 配達員:それは本当に大間違いだよ。みんなそう言うんだ、効率的だって。俺たち配達方法をプラットフォーム側(Uber Eats)に伝えるだろ?だからこっちがスピードの出るスクーターだって分かったら、遠方ばっかり手配しやがるんだよ。こっちからすると全然効率的じゃねんだ。

それから「自転車に比べて単価高いんじゃ?」って言われるけど、俺たちスクーター組はそもそもコストがかかってるんだよ。ガス代、保険、検査、 こんなんで配達数回分が飛んでくんだ。当然俺たちは外注扱いだから、そんな経費負担は見てくれるわけもないよな。

はっきり言って、こういうフードデリバリーの仕事は「自転車で運動出来ながら小遣い稼げる家で暇してるよりはましなバイト」ぐらいのモチベーションじゃないとガックリくるぞ。

最も効率の悪いギグエコノミー?

その後も街中の Uber Eats、foodora、Wolt 配達員に話を伺いましたが、「めっちゃ儲かる」と答えた人は皆無でした。

やはり同じく待機時間が多いことがこの単発案件の落とし穴で、丸一日配達員として時間を費やせば、結果的に普通にレストランでバイトしている方がはるかに稼げるのだそうです。

「ストレス溜まるよ」と自転車を発進させた先ほどの配達員の人の後ろ姿が印象的でした。

こういったギグエコノミー系の仕事は単発であるがゆえに、「空いた時間に効率的に仕事を入れる」がキーになってきます。

その意味では、フーデリの配達員は最も効率の悪い仕事の1つかもしれず、生活コストの高いスウェーデンでは生計を立てるのに不十分な職種であると言えるでしょう。