半年ほど前、Acne Studios の創業メンバー Jonny Johansson 氏と Mikael Schiller 氏がゴールドマンサックスに可能性のある買収会社(アクネを買う)を探す依頼をしたと WWD が報じました。

「うぇっへっぇーーー!!??」

となった方も多いかもしれませんが、僕は「ヒィービブォーウェッヘッェーー!!??」となりました。審議は定かではありませんが、驚きです。

以前にも触れた通り、近年世界中で戦艦店を増やし国際化を加速させている Acne ですが、とりわけアジアを戦略上最も重要なマーケットと捉えているようです。

実際、日本だけでなく中国(北京、上海)、韓国(京城、釜山)、香港などの大都市にも店舗を構えアジア地域への出店数は全体の3割近くにも上ります。

直近の年間売上高は2億ユーロに逹し、現在も様々なことに挑戦中の成長著しい企業となっています。

ですのでこの情報は意外過ぎました。「これからなのに …」

しかし、実は Acne がファッション業界を賑わせたのは今年に入りこれが2度目のようです。




カリスマが移籍

今年1月、Acne Paris(パリ)のトップディレクター Christina Ahlers さんが Acne を去りCourrèges の CEO に就任しました。

ヨーロッパのファッション事情に詳しいスウェーデン人の友人 Lisa 曰く、

パリ支店は Acne にとっても非常に重要な場所なの。パリが Acne のインターナショナルヘッドクオーターだからというだけでなく、Acne のデザインをヨーロッパに広めるためのファッションショーや世界中のデザイナーが最も集まる街だからよ(ウィンク)

と詳しく教えてくれました。ちなみにこの Lisa は(絶世の美女で)美容師なんですが以前デザインの勉強をしていたようです。

彼女が言った通り、Christina 氏は Acne をファッションの聖地パリで成功に導いた立役者(カリスマ)として認識され、事実12年間尽力されたようです。

Acne にとっては大きなロスのようです。

中国企業が買収するのでは?

実はこの内容は別で運営しているサイトで半年前にアップしたものなんですが、それからすごくたくさんのメールをいただきました。

というのも、僕の勝手な予想で中国企業が Acne を買収するのでは?と考察を書いたからです。

スウェーデンで活動するジャーナリストの方からもこの件の行方やどこで情報を得るべきかなど色々聞かれました。

 

「安易に自分の考えインターネットで述べるのも怖いな〜」と再認識させられた次第です。

とはいえ、中国企業が買収するのではないか?という見識は僕なりの考えがあります。



欧米企業を買い漁る中国企業

近年、中国ではスタートアップブームと言えるほど様々な産業界でベンチャービジネスが生み出されていることはよく知られています。アジアのシリコンバレーと化した深圳からその他全国へとその流れは広がり加速しているようで、実際にユニコーンスタートアップ企業数でもアメリカに迫りつつあります。

現在上海に住むスウェーデン人の友人(大阪に2年留学経験あり)曰く、日常の生活レベルでは中国の方が日本よりも IT 化が進みはるかに便利だそうで、本当に驚きです。

話を戻しますと、スタートアップ活動が盛んな背景には豊富な資金を持つ様々な金融機関、投資会社、大企業の存在があります。今そんな中国の大企業による投資が、欧米企業の買収へと向かい様々な業界で巻き起こっています。

もちろんファッション業界も例外ではありません。

買収される欧州ファッション企業

今年2月22日、Fosun International という中国のコングロマリット企業がフランスのハイエンドファッションブランド LANVIN を買収し世界に衝撃を与えました。

さらに3月2日、Fosun International はオーストリアの老舗下着メーカー WOLFORD を買収(50.87%の株式取得)。

この他にもパフォーマンスが落ちた欧州中堅ファッションブランドを中国企業が買うのではないかという噂があちらこちらで聞かれます。

このように近年中国企業がヨーロッパで企業を買収する側として攻勢していることが分かります。しかもこれまでのものづくりなどの業界にとどまらず、ファッション業界でもパトロンとしての地位が確率しつつあるようです。



中国とスウェーデン

少し話はそれますがスウェーデンの老舗自動車メーカー VOLVO を思い出して下さい。

金融危機以降、米 Ford 社からあちらこちらへ身売りされ、SAAB の二の舞になるのでは?と言われている時代さえありました。しかし、2010年に中国自動車メーカー Geely 社に買収され、パフォーマンスを改善していった様は近年最も成功したM&A のケースとして紹介されています(ちなみに Geely は今年 Daimler 社の筆頭株主にもなりました)。

実際、ボルボの現地エンジニアと話した際は、「Geely の経営姿勢(VOLVO 社への経営には首を突っ込まず、あくまで技術的な協力や資金面でのバックアップに徹している)には正直いい意味で驚いた」と聞きました。

言い換えれば、中国企業による同国企業の買収に対して以前よりガードが下がっていると言いますか、スウェーデン全体的にネガティブな印象が払拭されているという印象を受けました。

以上の点に加えて、

・世界中が投資というマネーゲーム化している点

・中国企業が潤沢な資金を持て余し、買収意欲が強い点

から Acne の買収に中国企業が名乗りを挙げるのでは?と予想しました。

メディアはゴールドマンサックスがすでに候補者と協議を始め M&A の手続きにこの夏から入るとリポートしていましたが、なかなか動きがないようです。

結果が楽しみですね。