スウェーデンのスタートアップエコシステムはインキュベーターやアクセラレーター、投資家、イベント・コワーキンスペースの起業家など多くの異なる立場の人々によって形成されてきたことをこれまでお話ししてきました。

一方、国が担ってきた役割が大きいことも忘れてはいけません。

以前のポストで触れた点をもう1度おさらいしますと、

LINK僕が行く前からすでにスウェーデンに魅了されていた理由4

国はベンチャー・キャピタルや官民の基金からも資金を集め、戦略分野に効率的な資金配分を行ってきました。

2014年のR&D のために使った投資額は GDP 比で3.7%となりました(ちなみに、2014年のベンチャー・キャピタルによる投資は26億スウェーデンクローナに達しました)。

過去十数年の経験からスウェーデン政府は R&D が経済、社会、さらに自然環境などにも与える影響の大きさを理解しており、その活動にかける予算は潤沢で様々な分野で研究開発活動を後押ししてきました。

その結果、同国は世界でも有数のイノベーション大国となりました。

このスウェーデンの R&D の盛り上がりを支えているのが官庁である VINNOVA(スウェーデンイノベーションシステム庁)です。

僕が席を置いていたスタートアップハブの創業者やスタッフの方々は「VINNOVA なしにスウェーデンのイノベーションやスタートアップを語れないわ」と言うほど、彼らのバックアップ体制は心強いようです。

VINNOVA

VINNOVA はスウェーデン国内のイノベーション創出活動をバックアップする政府官庁です。イノベーションシステム 庁という名の通り、年間27億スウェーデンクローナという巨額の資金提供をあらゆる産業に行なっています。

彼らのミッションステイトメントを見ればすぐに分かりますが、

“Promoting sustainable growth by improving the conditions for innovation, as well as funding needs-driven research within the areas of technology, transportation, communication and labor.”

よって、投資をすべきかどうか精査する1つの着目点としてそれがどれだけ社会にインパクトをもたらし”価値”として捉えられるかどうかを判別の基準にしているようです。

SUP46 のイベントで VINNOVA の方とお話しする機会があったのですが、この点に関して、逆に黒字転換が近い将来見込めない案件であっても例えば環境にプラスになるようなプロジェクトであれば積極的に投資していく姿勢だと語っておられました。

通常のベンチャーキャピタルや投資家がこのような決断を下すのは一般的ですが、政府官庁の1つがこのようにリスクをとって攻めの投資が出来るのもチャレンジ精神旺盛なスウェーデン人の気質と言えるかもしれません。

750

VINNOVA は毎年750社を選出し、彼らのイノベーションプロジェクトを表彰します。さらに選出したプロジェクトや企業は研究開発や法的コストに対する名目で資金援助を VINNOVA から受けられます。

VINNOVA がこうしてリスクをとって積極的に投資する背景には、ポテンシャルの高いプロジェクトを資金的な理由で中止するような “もったいない” 状況を減らすことがあります。

彼らが投資する資金がスタートアップの劇的な成長を後押しし、それが社会に雇用や歳入などの恩恵として返ってくることを強く信じているのですね。

VINNOVA 自身もコワーキンスペース!?

残念ながら僕は VINNOVA を訪ねる機会がなかったのですが、先ほどの SUP46 で出会ったスタッフの方が「僕たちもコワーキングスペースで働いているんだよ」と言っていてすごく驚きました。

日本で官庁といえば、お堅い感じでポマード塗りたぐりの額縁メガネをかけた上司の個室ノック、みたいなドラマからインスパイアーされ過ぎな情景を思い浮かべますが、やはりスウェーデン。

官僚たちもオシャレです。

スタッフの方々も一般的なコワーキングスペース同様、自由に場所移動出来るデスクで仕事をし、プロジェクトによってその都度シートの場所を変更したりとかなりフレキシブルに仕事をされているようです。

VINNOVA のスタッフさんと話していて感じたのは、彼ら自身が起業家マインドを持って活動しているなという点でした。他のスタートアップで働く方々と何1つ変わらずスウェーデンの次のイノベーションを生み出す環境作りに精を出している様子でした。

16 – 20%の高い確率

VINNOVA から資金提供を受けるためには提出するプロジェクトが以下の点を満たしている必要があります。

・商品化の可能性が高いこと

・社会に及ぼす影響や利益が大きいこと

・ビジネスモデルがユニークであること

・チーム体制が万全なこと

・企業ビジョンが魅力的であること

これらの観点で経験豊富な外部のビジネスマンがプロジェクトの内容をチェックしていきます。

 

「うわー、チェック事項が多くて大変そう〜」と思うかもしれませんが、なんとファンディングを受ける確率は16〜20%と相当高いです。

 

夢があります。

VINNOVA プログラム

さらに、VINNOVA はスウェーデンの革新性を強め産業再生を目的とするプログラムを実施しています。

その一環として特殊性の強い企業、大学、研究機関、新たなプロジェクトにチャレンジする公的機関内の部署などにも投資を行なっています。

VINNOVA のプログラムは大きく3つに分かれます。

Strategically important knowledge areas

 

Innovativeness  of specific target groups

 

Cross-border co-operation

 

VINNOVA の活動をはたから見ていてあらためて感じたのは行政の積極的な動きは、こういった経済面特にスタートアップ環境を作るのに不可欠だということです。

また彼らの積極的な活動がスタートアップ関係者を助けるだけでなく、それがまた政府関係者への信頼に繋がっていることも認識出来たことでした。