スウェーデンの車と言えば「Volvo」というのが我々日本人の一般認識ですが、スウェーデン人にとってはそうではないかもしれません。
なぜなら、こちらでは今でも Saab(サーブ)をあちらこちらで見かけるからです。
当然「昔に買ってそれから乗り換えていないだけだろう?」という質問が返ってきそうですが、所有者と話してみると必ずしもそうではないようです。
スウェーデン人は優しいので、街中で突撃インタビューしてみました。
Saab の経営破綻についての意見
スウェーデンのバイブル書・スウェーデンパラドックスで語られているように、政府は同国を代表する自動車メーカー Saab を救済せず、その結果、2011年に経営破綻しました。
Saab の倒産劇に関しては、「競争力を失った企業や産業には投資(救済)を一切行なわない」国の強い意志に称賛が寄せられた一方、多くの失業者を出すことになった判断を巡っては、やはり批判も多かったのが実情のようです(友人談)。
ただ僕自身が色々な年代の方々とこの件について話して分かったのは、世代によって捉え方が全く異なるということでした。若い世代はこの判断を圧倒的に指示しています。
逆に言うと Saab に特段の魅力を感じていないようです。「それならばまだ Volvo、もっと言うとドイツ車のがいい」という感想も多かったです。
逆に上の世代の方々はこの大衆車に昔から馴染みがあり、Saab 倒産は避けるべきであったという声も聞かれました。
今でも Saab を所有する理由
たまたま街を徘徊中、Saab の前で立ち話をする男性(中高年)がいらっしゃったので、勇気を出して「どうしてまだ Saab に乗っているのか?」を聞いてみました。トーマスさんです。
––– スウェーデンで今でも Saab をたくさん見かけることに驚いたんですが、逆にどうして Volvo じゃないんですか?
トーマスさん:そうか、日本人にはあまり馴染みがないのか Saab は。今でこそ Volvo はラインナップが増えて、ハイエンドのクラスも揃えてるから、外国人にとっては高級車扱いなのかもな。
でもスウェーデン人にとって元々ボルボは大衆車で、逆に Saab は高級車としての認識が強かったんだよ。だから街中で Saab を走らせてる俺みたいな年代の奴らは、みんな今でも Saab が好きで乗ってるんだと思うな。
––– じゃあやっぱり Saab が倒産した時は驚いたというか、救済しない政府に対して憤りみたいなものは感じましたか?
トーマスさん:Saab 破綻はもちろんスウェーデンにとっては大きな出来事だったな。現に俺のツレで関連会社に勤めていた奴らも多かったし。でも一方で Saab が潰れたのは分かるな。
思い切ったモデルチェンジだとか、新車種発表みたいな派手なのが無かったし、若い人間からするとドイツ車の方がはるかにスタイリッシュに見えただろうな。
そういう意味では新しいボルボのデザインはイケてると思うぜ、Volvo は好きじゃないけど。えっ、理由? Saab オーナーだからに決まってるだろう。
Saab は高級車
ちょっとワイルドな見た目のトーマスさん、噂通りの回答をして下さいました。
・Saab = 高級車
・Volvo = 大衆車
と巷でよく言われる例のあれです。自動車産業が基幹産業だった時代には、今ほど外国車が国内に入ってくることはなく、必然的に国産車から優先的に選ぶトレンドがあったそうです。
皮肉にも昔は Saab の方が人気があり、Saab のオーナーになることがステータスであったことも加えて教えてくれました。「いつかはクラウン」のような感覚でしょうか。
ちなみに2度の経営破綻を経験し、現在はブランドが廃止されてしまった Saab ですが、国内にはまだメンテナンスや修理を行なってくれる整備会社はあるようです。
交換が必要な部品パーツが手に入らなくなった時には Saab はもう諦めるそうですが、それまでは頑張って乗り続けるとのことでした。