30代でビジネス・マネジメント系の留学となった際、一般的な選択肢は MBA 留学だと思います。そして MBA 専攻を決めた上で、1年なのか2年なのか自分の条件に合った国選びをするのが一般的だとホルダー達からうかがったことがあります。
僕は留学に際してどうしてもスウェーデンに行きたかったので、国ありきでプログラムを決定する手順をとりました。今思えば人とは順序が逆だったのかもしれません。
最終的に目に止まったのがアントレ(Entrepreneurship)だったのですが、「起業を勉強する」ということが実はよく理解出来ないまま志願したのを覚えています。なぜなら「起業を勉強するには起業するしかないから」と考えていたからです。
一方で起業が盛んな国スウェーデン、なんか知らんけど国際的な企業の多いスウェーデンで「アントレ」を学べば、何か自分の将来のための新たなアイディアを得られるのではないか?と期待も膨らませていました。
これまで本当にたくさんの方から「起業を学校で学ぶってどうなの?」と聞かれてきました。正直「何でそんなの受けてんの?」とおちょくられたりバカにされたこともあるのですが、大学院留学でアントレはありだったかなしだったか?を今日はお話したいと思います。
海外大学院の Entrepreneurship
Master でアントレを提供している大学のサイトでは「このプログラムで起業家としての能力を身につけられる」「このプログラムがあなたの起業をサポートする」とほとんどの場合明記されています。
しかし、実際に大学院でプログラムを受講した者として言えることは、「それはあり得ない」ということです。
これはウプサラに限らずスウェーデン国内の他大学、イギリスやドイツの学校で同プログラムを受けた方々とも意見交換したので、最低でもこれらの地域ではそこまでプラクティカルなプログラムは提供されていないと考えた方がベターかと思います(北米などは聞く機会がなかったです)。
当然アントレプログラムを受講する者として、朝から晩までそれに関する本を読んだり、意見を言ったり、人に会ったりと意識は高ります。
一方でそれが起業経験や起業能力の向上に直接的に繋がることはなく、あくまで知識の蓄積程度にとどまり「実体験から得た学び」には勝てないと感じていました。
これは僕自身も過去に(起業ではありませんが)新規プロジェクトを率いるなかで、想定外のことが起こったり、自分の能力や経験が乏しいことから小さな失敗を繰り返し、そこから得た教訓が新たな挑戦をする際に役立っていることを実感しているからです。
「学校で得た知識」というのは「(実体験の)失敗から得た教訓」には及ばないことをあらためて認識しました。
まとめると海外大学院アントレプログラムでは、起業家になるための何か特別なトレーニングが行われるわけではなく、あくまで「起業」に関連した勉学にいそしむ程度にとどまります。
ここが各学校のホームページ上で記されている内容とギャプのある点で、いかにも「実践的な特殊訓練を用意している 」ようなことを書いていますが、実際の訓練はケーススタディや学内ピッチくらいのものだと考えて間違いないです。
それでも修士のプログラムとしてはかなりマシ?
「じゃあ大学院留学にアントレを選んだのは失敗だったか?」そう聞かれた場合、僕の答えは No(選んで良かった)になると思います。
「起業能力の向上に繋がったわけでもないのにどうして?」と聞かれたことも何度もあるのですが、理由は他のマネジメント系プログラムと比較した場合、はるかにケーススタディの数や学校外で外部の人の話を聞くフィールドトリップの機会が多かったからです。
これはウプサラに関してだけですが、他の経済経営学系プログラムはほぼほぼ学内で座学、討論の機会さえ乏しく感じることが聞いていて否めませんでした。
アントレに志願したが叶わずウプサラでマネジメント系の Master を受講していた友人曰く、アントレと他プログラムではディスカッションの量が雲泥の差のようです。
確かにアントレプログラムはケーススタディを元にコースが展開されていきましたので、後半になればなるほど「考える」作業が増えていき、コースに飽きるということはなかったです。直球で言うと友人はプログラムに飽きまくっていました。
相対的な意見で若干ネガティブかもしれませんが、他より大分マシでした。
もし大学院のアントレが学問重視であることを知っていたら …
僕は自分のスウェーデン留学にとても満足しています。学業だけじゃなくそれ以外からも多くのことを学びましたし、たくさんの素晴らしい方々に出会えたこともその一因です。
一方で、もし「実は大学院のアントレは実践よりも学問重視である」ことを事前に知っていたならば、Entrepreneurship というプログラムには志願していなかったと思います。
本当に起業を学ぶのなら、大学院留学に費やした費用で自己プロジェクトにガッツリ取り組む方がやはり学びは大きいと思うからです。
例えばスウェーデンでは、自分のスタートアッププロジェクトに従事しながら、スタートアップイベントやワークショップに参加しまくり、ネットワークやコネクションを増やしている人々にたくさん出会いました。
実際にそういった活動から恩恵を受けている人も数多く見られ、彼らの活動の方が大学院で勉強するよりも「現実的な Entrepreneurship」 だと見ていて思いました。もしかすると “隣の芝は青く見える” かもしれませんが。
また、当然そういった自由な活動だけでは不十分なことも色々と出てきますが(例えば長期滞在用のビザを取るには就労目的/勉強目的でないと申請できない)、大学院で修士課程のアントレプログラム受講は(僕の場合ウプサラでは)「他よりかなりマシだけども、もっと別の道もあった」と終わってみて思います。
この点はウプサラアントレに限ったことじゃないかもしれませんし、ウプサラ大生であったがゆえに受けられた恩恵も多いので「これが正しい」と断言は出来ないです。
もし大学院留学を検討中の方でアントレプログラムに興味のある方は、この点ご考慮いただいた上で志願を考えてみられてはいかがでしょうか。