スウェーデンの不動産市況は、ここ数年他の先進国同様、非常に活況だったと言われてきました。これは都市開発関係のビルの建築だけでなく、住居用コンドミニアムなどに関してもです。

事実、慢性的な住宅不足と人口増により、安定的(?)な需給ギャップが不動産価格を押し上げてきたと皮肉られるほどです。

Global Property Guide の調べによれば、過去6年で国内の住宅価格は、44%も上昇。

今年に入り、この不動産バブルは、落ち着きを取り戻す動きを見せ、2019年の第一四半期では、価格が2.09%下落に転じました(昨年同期は2.71%の増加)。

しかし、数字は減少に転ずるも、一般市民の感覚では、まだまだ「Too much(高すぎる)」と言われ、正常な価格に戻るには、相当な時間がかかるだろうと考えられています。

この価格高騰は分譲住宅・賃貸アパートともにです。



60万人以上が住宅を探している?

公的機関 Bostadsförmedlingen (首都・ストックホルムの賃貸住宅業者を監視、取りまとめする)は、2017年7月の時点で、ストックホルムで住居を探している人の数が58万人に上ったと明らかにしました。

2017年1月の発表では、55万6千人でしたので、半年足らずで2万人以上増加したことになります。ちなみに前年2016年は、1年で4万人増えたようです。(これ以降のデータを探してみましたが、見つけることが出来ませんでした)。

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人口増と住宅不足は現在も慢性的に発生していますので、物件を探している人の数は現在60万人以上に達していることが予想されます。

*Source: The Local(スウェーデン地元紙)

スウェーデンでは、賃貸物件を探す場合、このように正式に Waiting List(待っている人のリスト)に乗る必要があり、自分の順番が来てから契約することになります。

じゃあ実際60万番目に Waiting List に登録された場合、自分の番が回ってくるのはいつになるのか?なんとそれは20年後とも30年後とも言われ、まさにノーバリーノウズの状態です。

賃貸アパートの探し方

それじゃあ、ストックホルムには60万人もホームレスの人がいるのか?と言われそうですが、当然そんなことはありません。

皆、なんとか短期で借りられる物件を渡り歩いたりしているのが実情です。例えば僕は友人宅に居候したパターンですが、多くの場合 Facebook 等の SNS で住居を探していることをつぶやきます。

すると友人達がシェア可能な物件がないか、そのつぶやきを共有したり、その書き込みに誰か思い当たる人をタグ付けしたりして助け合います。つまり、ネットワークが広ければ短期であれ空き物件を見つけられる可能性が高いのです。

ちなみに短期と言いましたが、数ヶ月〜1年や2年単位で借りられるケースも多いです。これは物件のオーナーが1年だけ他のヨーロッパに移住(余暇)し、その間にストックホルムの住居で民泊収入を得るなど、EU人ならではのライフスタイルが可能だからのようです。

また、ある物件を賃貸する権利を「Förstahand」と呼びますが、この権利を所有する人が、第三者に又貸しする「Andrahand」物件(こちらも数ヶ月〜2年程度)もスウェーデン社会では一般的です。Andrahand 賃貸を探し、数ヵ月単位で住居を転々とする人も僕の友人には多かったです。

しかし、当然住居不足が深刻なことを知っていますので、そこはしっかりと家賃を取ってくると考えた方がよろしいです。ウプサラに住んでいた者からすると、ストックホルムの家賃は非常に高く、東京に住む感覚です(しかしシェアハウス)。

当然、この物件渡り歩き&高い賃料支払いに嫌気がさし、「じゃあいっそ家(アパート)買うか」というインセンティブが働きます。



スウェーデンで家(アパート)を購入

「家買うか」となった場合、まず「新築/中古」の2つの選択肢があります。ここではアパートをケースに取り上げます。

新築物件の購入は …. 「無理やろ…」。これが僕の率直な感想です。首都近郊ではそれほど価格が高く、一般人が手を出せるレベルではないと思います。

「これも外国人大金持ちの投資対象になってしまうのかな?」そう思わずにはいられませんでした。

中古物件の購入ですが、これが面白い。新築物件が不動産業者の定める固定価格で取引されるのに対し、中古物件はオークション/ビッディング方式が取られています。

不動産業者のオフィスに貼られている、物件紹介記載の価格から入札がスタート。その後購入希望者同士で、自分が希望する価格をオファーしていきます。その昔とんねるずがやっていた番組ハンマープライスを思い出します。

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住宅不足が慢性的に続くスウェーデン社会では、人々の住宅購入意欲は旺盛で、不動産業者に勤める友人ニコラス君曰く「中古物件はかなりの確率で、物件オーナーの希望価格より高値で売ることが出来る」のだそうです。

当然、この事実(住宅不足で売却が容易、かつ売却価格が安定している)があるがゆえに、「住宅購入」のハードルが下がるのだろうと考えられます。今後空き家が爆増していく日本とはまさに正反対。

アパートを売却&購入した友人

僕がウプサラ時代にお世話になっていた友人(ストックホルム)は、ストックホルムにアパートを所有していました。中央駅から電車で1駅の場所に位置し、最も住環境の良いとされる場所でした。

その友人が今年長年住んだアパートを売り払い、新たにアパートを購入したようなので、遊びに行くがてら不動産売買についてうかがってみました。

まず驚いたのが、スウェーデンでは不動産業者が中古物件1つ1つについて、写真のような本を一冊製作します。プロのカメラマンを入れ、部屋の隅々まで写真を撮り、部屋の間取りからアパートのアピールポイントまで、物件のPRを徹底的に行なうのです。

ちなみにこのアパート(1LDK)、3,095,000SEK で売りに出しました。その後、予想通り複数名が購入を希望し、オークションがスタート。最終的に4,000,000SEK を超えた額で売却することが出来たそうです。

(4,000,000SEK – 3,095,000SEK )× ¥12 = ¥10,860,000

1SEK=¥12とした場合、なんと1千万円も上振れした計算になります。そして現在、以前の倍以上の広さのある、6,000,000SEKで購入したアパートへ引っ越し、Airbnb で安定的に民泊収入を得ながら住宅ローンを返しているそうです。

その新たな物件も大規模リノベーションを行なっている最中で、美術館のような家になりつつありました。今後数年で住宅ローンを返し、その物件をまた売却し将来は郊外に新築の家を購入予定のようです。夢があります。



印紙税、固定資産税、外国人に対する不動産規制

スウェーデンで不動産取引を行なった際発生する費用は、住宅価格の支払い以外に Stamp Duty (印紙税)とProperty Tax(固定資産税)があります。

印紙税は住宅購入者にその支払いの義務があり、購入価格の1%を購入時の1度だけ支払うことになります。住宅販売者には住宅販売手数料が課され、販売価格の3.5%が通例のようです。

固定資産税は、評価額の75%に対し、1.5%という課税率が定められております。ただし新築物件の場合、最初の5年間は免税され、その後上記の固定資産税を納めることになります。

また、スウェーデンでは国籍に関わらず、安定した収入を得られていることが出来れば、住宅ローンを組むことが出来ます。言い換えれば、仕事にされ就ければ誰でも不動産を所有することが出来るようです。

物件購入時には取得額の15%〜25%の Down Payment(頭金)が必要になり、住宅ローンの平均的な目安は20年。不動産価格が高騰している現実を踏まえると、決して楽に返せるものではありません。

Source: Just Landed

とはいえ、夫婦共働きの可能な体制が整えられているこの国では、これまた日本で爆増中の住宅ローン破産というのはあまり聞かないようです。

先日久々に再開した Nataly も安定した仕事に就き、現在住宅購入を検討中だと言っていました。もう1度言います。夢がある〜。

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