以前スウェーデンでの子育て事情に関して、友人の Nataly 親子についてお話ししました。
LINK【スウェーデンで子育て】国内随一の国際色豊かな街、ウプサラで経験した子育ての意外な苦労
その回では、移住してきた外国人ならではの苦労についてご紹介しましたが、今回は子育てにかかる費用に関してです。
スウェーデンのみならず、「北欧では大学まで授業料が無料」という情報はすでによく知られていることかと思います。ですが、それ以外の子育てに関わる恩恵については、あまり取り上げられていないのも実態です。
結論から言うと、教育費のバカ高い日本とは真反対である実態があり、これから子育てする方にとっては何が正しいんだろうと思われる内容になるかもしれません。
よく知られている基本情報
冒頭触れたように、スウェーデンでは一切の授業料が無料となっています。具体的な教育過程は
- プレスクール(保育・幼稚園)
- 基礎学校9年間(小・中学校:7歳〜15歳)
- 総合制高等学校3年間(高校)
- 大学(学士課程)3年間
- 大学(修士課程)
- 大学院(博士課程)
となっていますが、実際に無料なのは “2. 基礎学校以降” となります。
まずプレスクールに通うまでですが、スウェーデンでは育児休業手当を享受するのが一般的であるため、1歳半〜2歳まで在宅育児する方が多いようです。
その後6歳まで続くプレスクールついては園料を支払う必要があります。しかし、親が無収入または年収が低い場合、支払額が大幅に免除されるようで、友人の Nataly はそれにあたりました。
その後基礎学校、高等学校、大学と進学過程は続きますが、基礎学校では教科書や文房具類など、勉強に必要なものは基本的に全て学校から支給されるようです。
養育費(幼稚園)
Nataly 曰く、息子の Sebastien がプレスクールへ通っていた頃、支払っていた費用はないに等しかったと言います。当時、彼女と(元)旦那さんはともに大学院へ通っていたので、収入はゼロの状態。
それゆえに毎月支払う園料は大幅に減額されていたようです。その後、職につき安定した収入が見込めるようになってからは、支払額が増えたのだそうです。
しかしそれでも保育園でのもてなしは、自国のサービスとは比べ物にならなかったそう。
低料金でプレスクールに通えているだけでなく、朝の軽食、お昼ご飯、昼下がりの軽食、おやつなど、食事面で親が何か特別用意するものは何もなく、安心して勉学・就労に勤められたんだとか。
また、大学院のミーティング等で定時に迎えに行くことが出来なかったため、追加費用を払って時間延長していたようでしたが、その額が¥2,600/月。
このようにプレスクールは有料ですが、親が就業しながら子育て出来るような仕組みが整えられているのも、スウェーデンの特徴の1つと言えることが出来ます。
養育費(基礎学校編)
現在基礎学校で元気はつらつの Sebastien。最近はスウェーデン語も問題なく話せるようになってきて(英語、スペイン語もぺらぺーら)、日本語の勉強を始めたそうです。
その他にもサッカー、チェス、ギターも習いに行っているようです。
「ちぇ、チェス!!」
趣味散歩の中年ジャパニーズはとっさに叫んでしまいました。ちなみにこれらのお稽古へ行くのは、スウェーデン社会では一般的なようですが、こちらは無償ではないようです。
現在 Sebastien の住む Taby 地域でのこれらの習いごとの費用は、
・サッカー:1,400SEK/年(週に2回のトレーニングと週に1回の非公式試合含む)
・チェス:1,300 SEK/年(週に1回)
・ギター:500SEK/6ヶ月(ギターの先生が基礎学校まで来てくれて学ぶ)
月謝にして、1,200円、1,100円、800円くらいですね。安い!
さらに子供がこういった趣味の分野で新たなチャレンジを出来るようにするのが、育児手当。
現在 Nataly は Sebastien 1人に対して、毎月1,300 SEK が国から支給されています。またこの支給は彼が18歳になるまで続き、今後子供が増えるごとに育児手当は増えていくのだそうです。
大学編
5年間の国からのお小遣いに関してですが、システムが変更されたのか、聞く世代によって答えが「返済不要型」だったり、「返済型」だったりまちまちだったりします。
僕の親しい友人は全員30オーバーで、彼ら曰く毎月¥35,000が支給され、返済せずに良かったと答えました。
ですが直近で僕が街の大学生に尋ねたところ、¥35,000のうち¥10, 000が返済不要、残りは返済が必要、しかし卒業する頃に決められた規定の成績を収めることが出来れば、返済予定だった¥25,000も免除されると回答されました。
このへんはもう少し調べてみる必要があります。
外国人スウェーデン留学に際しての奨学金に関してはこちらをご参照下さい。
教育費ゼロのメリット
プレスクール以降の教育費が無料(習い事は除く)という事実は、親・子供ともに大きなメリットを享受できると Nataly は言います。
親の面から言えば、アメリカ・日本などのようにバカ高い大学授業料のための貯蓄をする必要がそもそもなく、ゆとりを持って暮らしていけることが大きいようです。また早い段階で、家を買うかなど人生設計も立てられやすく、高い所得税にも納得がいくと言います。
子供の面から見ても、親がゆとりを持って子育て出来るため、両親と過ごす時間が十分にあり、愛情を受けながら発育する環境が整っていると言えます。また、親の所得状況で進学を諦めたり、進学したものの(現在のアメリカ・日本で社会問題化している)学生ローンの返済に苦しむといった状況に陥る心配がありません。
個人に「自己責任」として教育費用の捻出を迫る社会でなく、子供の発育に一番重要な教育は「国が責任を持って」提供していく覚悟の表れでもあります。
こうして見たとき、はやり高騰しきった日本の大学授業料問題を提起せざるを得なくなります。学生ローンに関する問題は僕の大好き NHK やネットニュースでも取り上げられていますが、不思議なことに授業料そのものを問題視する学者やメディアがいないのはなぜでしょうか?