産官学共同でストックホルムのスタートアップエコシステムが強固にされていく中、首都とその他周辺都市の差が大きく開いていくようになりました。そんな状況を危惧する声もあがり、各都市でストックホルムと同じくコワーキングスペースやインキュベーターの設立が急がれるようになりました。

昨年、僕が住んでいたスウェーデン第4の都市ウプサラ(ストックホルムから電車で1時間)でも BASE10 という名のコワーキングスペースがオープンし、地元で話題になっていました。

BASE10 はウプサラを拠点とするテック系スタートアップをサポートする目的で設立され、現在もその規模を急速に拡大しています。

創業者にも話をうかがったので今日はこちらをご紹介したいと思います。

キーワードはアップスタート、アントレプレナービザ、スウェーデン人の彼女です(!?)

BASE10

BASE10 はイギリス人シリアルアントレプレナー Jason Dainter に設立された、現在スウェーデン国内でも最も新しいスタートアップコワーキングスペースの1つです。

特筆すべき点は、彼自身が連続起業家でスタートアップエコシステムの形成においての問題点を熟知していることでしょう。

スウェーデンに来るまで様々なテックスタートアップの立ち上げを経験し、実際ウプサラに移る直前までロンドンのShoreditch という場所でオンラインマーケットベンチャーを経営していました。

ではなぜスタートアップ聖地のロンドンを離れ、こんな田舎街(失礼か汗)ウプサラへやってきたのか!?

彼女と住みたかったねん

創業者 Jason Dainter 氏

BASE10 のオープニングイベントに参加した時、なぜロンドンという大都市から人口10万人ほどのウプサラに拠点を移したのか尋ねたところ、意外な答えが帰ってきました。

ちゃうねん、ちゃうねん、彼女(スウェーデン人)がウプサラで勉強したい言いよってん。一緒に来なしゃーないやん?

あまりにも予想外の理由過ぎてうまくリアクションをとれませんでしたが、要はそれくらいシリアルアントレプレナー(連続起業家)はフットワークが軽いということですね。

ちなみになぜ関西弁風の訳かと言いますと、彼のノリが関西人風だからです。

さきほどの理由が本音か照れ隠しの建前かは分かりませんが、Entrepreneurs Academy というインタビューの中では、

数多くのテクノロジースタートアップハブで働いてきた者として、ウプサラにはすごくポテンシャルを感じるんだ。たくさんのテック人材、ヨーロッパ有数の権威ある大学、あと立地も空港から電車で15分とポジティブな面が多い。だけど一方でこの街の起業家と話してて感じたのは、スタートアップ文化がこの街はすごく弱い。ずばり言うと起業家や投資家が顔を合わせるスタートアップイベントが無いことと、スタートアップタレント達が活動できる場所がない。僕はこれらは同時進行で解決されないといけないと思ったんだ。

と答えています。そして BASE10 の立ち上げとウプサラ初の大規模スタートアップイベント開催の構想を練っていったのでした。

ウプサラのポテンシャル

ウプサラがグローバル規模でスタートアップハブになれる可能性が秘めていることを確認した Jason は、BASE10 の立ち上げの前に UPPSTART というストックホルムにひけを取らない大規模スタートアップイベントの開催を実現します。

これは先ほど彼がインタビュー中で語った、起業家と投資家がミートアップ出来る機会を設けウプサラスタートアップエコシステムの形成を目指したものでした。

UPPSTART は現在年刊行事となり、毎年多くの起業家が自らのビジネスやそのベンチャー経験をプレゼンし、スタートアップに興味のある人達で溢れかえる文字通りウプサラ市最大のイベントとなりました。

Startup GRIND Uppsala

Startup GRIND は世界中で定期的に開催される起業家達を educate(教育)、inspire(鼓舞)、connect(結ぶ)する目的を持ったスタートアップイベントですが、こちらもBASE10 で開催されます。

毎月ゲストとして様々な起業家が呼ばれますが、共有されるのは決して成功体験だけではありません。

例えば、Pirate Bay という国内でも物議を醸した個人間のファイルシェアリングプラットフォームを運営していたベンチャーの創業者がその経験を語りました(Pirate Bay は世界中に多くのユーザーを抱えていましたが、ビジネスモデルの違法性を指摘され政府から閉鎖に追い込まれました)。

この時の話は実際に国の役人達とのドラマのようなやりとりをオープンに話し、非常におもしろかったです。

 

BASE10 に入居するには

BASE10 のスタッフの方にうかがったところ、入居条件は取り組んでいるベンチャープロジェクトがテクノロジー系である限り問題無いということです。

ただ、今現在 BASE10 の活動規模は急激に拡大しており、志願者はどんどん増えていますので面接を受け選考された方のみが入居可能となります。

また昨年は学生起業家応援の位置づけでウプサラ大学生に特別なスカラーシップをオファーしました(無料でオフィス利用など)。

オフィスの空きがまだあるか、特別なプログラム(スカラーシップ制度など)のオファーがあるかどうかはその都度変わってきますので、お気軽に立ち寄って下さいとのこと。

現在、ウプサラではBASE10 や UPPSTART のスケールアップのみならず、Uppsala Tech Meetups、the Uppsala Hackathon, Guerilla Office、 Uppsala Innovation Center など多くのスタートアップ関連の活動が活発的になっています。

このトレンドは今後も勢いを増していくことが期待され、Jason の言う通りウプサラがスウェーデンを代表するスタートアップテックハブになる日もそう遠くはないかもしれません。

BASE10 自体も、市や投資家、ベンチャー企業や大学などと多くのプロジェクトを進めている段階で、今後スウェーデン中から注目を浴びるスタートアップコワーキングスペースになりそうな予感がします。