大学院卒業以降、スウェーデンに行くと色々な変化に気付きます。

特にスウェーデンの若者の考え方などに、自分が滞在していた頃と比べ変化が見られ、”全く異なる” 社会システムを持つ国(Nippon)に住む者として、勉強になることが多いです。

そんなスウェーデンの若者の考え方に180°くらい変化を感じたのが、国の「難民政策」についてでした。

スウェーデンが「ヨーロッパで最も人道的な国」と称えられるようになったのは、2015年に発生した欧州難民危機へのその対応の在り方にあります。

あれから5年。

人々は国がとった政策にどのような想いを抱いているのでしょうか。

 欧州難民危機のスウェーデンの対応

Photo: euractiv.com

まだ記憶に新しい 2014 〜 2015年に起こった欧州難民危機。シリア、イラクをはじめとする中東地域に、 ISIS(イスラム国)が勢力を拡大し、人々を恐怖に陥れたことがあります。 

言葉では表せないほど恐ろしいこの集団による大虐殺行為から逃れるため、人々が海を渡りヨーロッパへと逃避しました。

しかし、欧州各国では経済状況の停滞などから、難民を受け入れる余裕のない国が、難民を隣国へ押し付けたり、入国が出来ないようバリケードを敷くなど、対応面ではバラバラだったことが浮き彫りになりました。

そんな時に積極的に難民を受け入れたのが、ドイツとスウェーデンでした。

ドイツは2014年の20万人から、2015年には100万人へと難民受け入れを増大させました。スウェーデンも2015年に15万人の難民を受け入れました。 

この15万人という数字、一見ドイツと比べ小さな数字に見えますが、当時980万人の人口だったスウェーデンには国の財政を揺がしかねないほどの数でした。

事実、スウェーデンは欧州で人口比あたり最も難民を受け入れた国となりました(1人あたりの受け入れ数で、ドイツを上回った)。



 スウェーデンが直面した難民受入の難しさ

Photo: soerenkern.com

難民受け入れ直後からスウェーデン政府は、仮設アパートの開放などで入国した人々に対応していました。

しかし、短期間で15万人という数の人を収容するキャパは国内にはなく、仮設テント、教会、軍兵舎、刑務所施設、古い防空壕までも利用し、緊急事態をしのいでいたようです。

それでも数万人単位での収容施設不足が続き、難民のフラストレーションが爆発。ストックホルム郊外の難民収容施設付近では、暴動や放火、施設で働いていた職員が殺害されるといった、痛たましい事件も発生しました。

また、財政的にも国の負担は膨張し、難民対策の国家予算は2016 年、約70億ドル(約8400億円)に達するなど、国の根幹を揺るがすほどの誤算となりました。

この間、今度は国民の政府に対する不満が膨れ上がります。

 若者達の本音

難民問題に関する質問は、仲の良い友人に対してでさえ、非常に気を使うトピックです。

「その国の人間でもない者が、国が四苦八苦する問題について野次馬根性を出して聞いているのか?」と僕なら思ってしまいかねないからです。

いえ、過去にそういった経験をしたことがあったからです。外国に住んでいる時に、ニヤニヤしながら東日本大震災の津波や原発問題について聞いてくる外国人と遭遇したことです。

あまりにも不快だったため、「何笑ってんのお前?」と好戦的に詰め寄ってしまったこともありました。あれは非常に悔しい思いをした経験でした。

ですので、今回街中の若い人達に本音を聞いてみましたが、非常に丁重に質問の意図などを伝え、了承いただいた方にお話いただきました。

女性大学生(3名):政府の難民政策に関しては、はっきりと間違っていたと言いたいわ。あまりにも親切にし過ぎたために、一部の難民をつけ上がらせて、主張や要求ばかりする人達を生んだと思うの。もちろん、困っている人を助けることは素晴らしいことだし、あの時(2015年)他のヨーロッパの国が面倒になる事を押し付けあうかのように、難民を追い返していたのにはショックを受けたわ。それでも今スウェーデンでは、難民の対応に追われて公的なサービスが機能していなかったり、私たちの生活面で実際に悪い意味で影響が出ているの。そんな状況が続く事はあってはならないと思うわ。



 本音の根底にあるもの

先ほどの女性大学生が話したことは、ここに載せられるレベルの内容でしたが、実は僕が友人や街中の若者に聞いた多くが、文字にするにはちょっと勇気のいる話しぶり、ワードチョイス、批判でした。

僕が留学していた2016年には、このように公然と難民政策批判する風潮は見られなかったので、ここ数年で人々の我慢が限界にまで達していたことが分かります。

結果、それは選挙などの政治面で顕在化し、極右政党が力を伸ばしたり、連立協議がまとまらず新政権の成立が遅れるなど、政治の混乱を引き起こしました。

しかし、僕が話を聞いて回っていると、難民への不満の根底にあるのは、より深刻な問題を危惧してのようにも感じました。その内容は僕が最も仲良くしている友人(ピュアスウェーデン人)から聞いた内容なんですが、少し荒々しい内容となるかもしれませんが、ご了承下さい。

 

友人:スウェーデン人は難民の受け入れについて怒ってるよ。実際、ストックホルムの ****(地域名)はもう俺たちが寄りつけもしないク○みたいなゲットー(スラム街)になってしまって。何で俺たちが一生懸命働いて納めた税金が、こんな奴らの携帯電話代、洋服代、飯代に化けてんだ。しかも、さもそれが当たり前かのように感謝もせず、不満は言うわ、我が物顔で通りを徘徊するわ。

でもより深刻なのは、犯罪が増えて以前のような治安の良い国ではなくなってしまったことだ。知ってるか?あいつらは国の援助でこの国に暮らして、その変わりに薬(ドラッグ)をバラまいてるんだぞ。

この前 Audi に乗ったタクシー運転手がめちゃくちゃな運転をして人を轢きかけたから、文句を言ったんだ。そしたら車から降りてきて脅し文句をこっちに言ってきて、その後猛スピードでこっちにぶつかってくるような運転を始めたんだ。

こいつはそのゲットー地域に住んでいて、7台の高級車を所有していることで知られているギャングなんだけど、いつも道を歩いている若者に「taxi いる?」と声をかけてるよ。意味わかる?「薬いる?」の意味な。そうやって難民として入国して、薬で大金を稼いで、デカい面してるゴミみたいな奴がそこらじゅうにのさばってるんだ。お前も見ただろう?この前の奴?(別でこの友人と歩いている時に見たやばい系の人間)そうやってこういう連中に染まっていく若い人間が増えていくんだ。

こんな連中を招き入れたのがあの難民政策で、誰かれ構わず受け入れたことは絶対にすべきじゃなかった。今のこの現状で政府が取った政策に賛同する奴なんかいないと思うぞ。

 若者だけにあらず

この友人は本当に正義感の強い人なので、そんな彼にとって国の治安を乱す不届き者は許せない存在なのだと思います。

さらに、国籍関係なく、「努力をせずに不正に所得を得ることなかれ」の意識が強いスウェーデン人にとっては、「難民」として入国し「薬の密売」で生計を立てるならず者は、最も批判の対象となる存在であることを感じさせられました。

上の写真は現在「反移民政策」をかかげるスウェーデン人の若い政治家ですが、先ほど話をしてくれた友人の高校時代の先生なんだそうです。

彼は教師時代、心理学などの科目を担当し、生徒のイメージとしてはものすごくオープンマインドで、グローバル志向の強い先生だったんだそうです。

そんな先生が反移民を唱えることに友人は驚きつつも、「これは移民や難民への差別ではなく、国の行き過ぎた政策を止めるための主張なんだ」と理解を示していました。

これまで安定的に移民を受け入れてきたスウェーデン。今後どのような方向へ向かうのか目が離せません。2020年からワーホリ解禁の日本への影響も気になるところです。

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