このランキングは11の指標(GDP、雇用、平均寿命、平均世帯収入、貧困率など)を総合的に評価し、その点数によって順位付けがされるようです。
ランキングのトレンドは、福祉に手厚いヨーロッパ諸国が上位を占め、とりわけトップ5には毎年と言っていいほど、北欧諸国が名を連ねます。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
世界で最も住みやすい国 2019
やはり今年もトップ5に、北欧4ヵ国全てがランキング入りしており、「最も住みやすい国」の名声は保たれたようです。
北欧諸国がトップにランクインしていることに関しては、当然ながら納得がいきます。このサイトではおもにスウェーデンのについてお伝えしてきましたが、他の3国も負けず劣らずの高福祉社会が実現されているからです。
しかしここ数年、”若者” と話すなかでずっと感じてきたことが、世界一住みやすい国に住む彼らでさえ、不平等さを感じることがある。そしてそれが年々顕著になってきているということです。
それが不動産にまつわる問題です。
世界一の国ノルウェー
今回は住みやすい国世界一位に輝いた、ノルウェーに焦点を当ててみたいと思います。先ほど「不動産にまつわる問題」と触れましたが、その話の前にノルウェーの生活環境について少し。
僕はこれまでオスロに3度訪問したことがありますが、この街(国)も緑あふれる住環境の良い印象を持っています。
現地で暮らす方に伺ったのですが、ノルウェーも教育、医療(出産なども含め)などは原則無料で、非常に子育てのし易い国なんだそうです。
特に教育に関しては、国をあげて “落ちこぼれ” が生まれることを、防ぐ取り組みに力を入れています。
どういうことかと言いますと、北欧で一般的な「教育の無償」は、親の収入に関わらず、平等に教育を受けられるフェアな制度であると言えます。
しかしその一方で、”無料であるがゆえ(懐が痛まないため)に”、勉強をしない子も多く出てくるようで、結果的に勉強する子としない子の間に、差が生じ易いという負の側面もあるようなのです。
そのため、赤十字が主催する「勉強の苦手な子に対する宿題サポート」が、毎日図書館で行なわれているのだとか。
現役高校・大学生のボランティアが、講師として子供達の勉強を見てあげる仕組みが出来上がっているのだそうです。非常にユニークなこの国ならではの取り組みです。
収入の大半を家賃に持っていかれる現実
しかし、そういった社会福祉面が充実する一方、グローバル経済の負の恩恵(国にとっては良いかもしれないが …)を受けるのが若い世代。
これまで多くの若い人達に、首都近郊で生活について話を伺ってきましたが、大多数が Rent(賃貸アパートの家賃)の問題をあげていました。
世界の生活費情報をまとめるサイト NUMBEO の調べでは、首都オスロ近郊で1人部屋アパートに住んだ場合(シェア含め)、その平均家賃は、12,224.56 kr(日本円で約14万3千円)、周辺地区で 9,744.44 kr(日本円で11万4千円)となっています。
例え医療や教育など、将来家庭を持った場合にかかる費用が無料と言えど、この高額な家賃を払いながら、物価の高い生活をコントロールするのは、やはり大変なのが本音のようです。
たまたま入ったショップの店員さんが、めちゃくちゃ詳しくリアルな生活状況を語って下さったので、もう少し突っ込んだ話を聞いてみました。
親の資産状況に大きく左右される生活
ショップのお兄さん:ノルウェーの住宅ローンは、法律で年収の5倍の額まで契約出来ないことになっているんだ。
僕の場合パートタイム(アルバイト)だから、年収の5倍にあたる額は100万7000kr(ノルウェークローネ)なんだけど、それじゃあアパートは買えないよ。
仮に買えるところが見つかったとしても、狭い物置みたいな部屋さ、オスロだと … 。
じゃあ郊外に行って安い物件探せば?ってなるけど、いい仕事が見つからないからね。そうなると年収も下がって、借りられる住宅ローンの額も下がるから結局は一緒なんだよ。
ノルウェーでは親の金銭的なサポートがなければ、アパートなんて買えやしないのが現実さ。ちなみに僕の親も蓄えがたくさんあるわけじゃないから、そんなのは期待出来ないんだ。
僕から見ると、良い時代を過ごした年配の人達が羨ましいよ。昔安く買った家やアパート、土地なんかも貸し出して、自分は生活費の安いスペインや気候の良い南欧に移住したり出来るからね。
そんな物価のギャップを利用して悠々自適な暮らしを出来るのが EU なんだけど、やっぱりそれが出来ない世代からすると不公平に感じるよ。
僕の彼女も親が離婚してて、当然金銭的な援助は望めないから、今は一緒に住んでいるんだけど、ずっと高い家賃を払い続けている状態さ。
ノルウェーが世界一裕福な国であることは知ってるんだけど、個人レベルで見たらそうでもないよ、本当に。
世界的なトレンドである不動産バブルは、「世界一住みやすい国と言えど、資産を持つ富裕層以外には、やはりネガティブな影響を与える」証拠であると考えられます。
世界一住みやすい国、世界一裕福な国、と称号が付けば付くほど、自分の生活とのギャップに違和感を覚えるとも語って下さいました。
これから生きていく若い世代についてまわる問題
ノルウェーだけでなく、世界中で都市部の不動産価格が急騰していることは、これまでも別記事で触れてきました。「首都圏、都市部だから高い」とはまた別次元の高騰っぷりです。
これら不動産価格の上昇は、お家やアパート購入、賃貸などの居住面での影響に止まらず、何か新たに経済活動をする時にも「マイナス」からスタートするということを意味しています。
どのような形態であろうと、店舗やオフィスを構える際には賃料(テナント)が発生し、(高い)それが利益を相殺してしまうからです。
しかしそれを価格に反映させようにも出来ない事情があります。不動産資産を持つ人や昔からその場所で商売をする権利を持つ人は、高額な家賃を払う必要がなく、お手頃な価格設定をしていることが多いからです。
不動産資産を持たない若い世代は、必然的に不利な勝負を強いられることになるのです。