Uppsala Career Tour でブリュッセルを訪れた際、街中や地下鉄で、テロ犠牲者を追悼する花束やメッセージを多数目にしました。

空港や商業施設、公共交通機関でも、武装した兵士が不審者の有無を絶えず監視しており、旅行気分で Study Trip を楽しんでいた一同は、身を引き締めます。

Photo: AP

LINKUppsala Career Tour ブリュッセル編

2015年11月に起きたパリ同時テロ以来、ヨーロッパではソフトターゲットを狙ったテロが頻発しています。

Uppsala Career Tour で訪れたベルギーでは、2016年に首都ブリュッセルの地下鉄や国際空港を自爆テロ犯が襲撃。

32人が犠牲となった連続テロ事件が起こりました。

「どうか Career Tour の間、何も起こらないように」

そうビクビク警戒しながら参加していた、キャリアツアー最終日程の Oracle Dublin 訪問時、スウェーデンストックホルムでテロ事件が発生したことを知りました。

Uppsala Career Tour メンバーは深い悲しみにつつまれ、その後スケジュールは中断する事態に追い込まれます。



ストックホルムトラックテロ事件の背景

2017年4月7日15時頃、ストックホルムの繁華街で最も人通りの多い1つ Drottninggatan (女王通り)で、トラックを使った無差別テロ事件が発生しました。

犯人はウズベキスタンから亡命申請をしていた、ラフマット・アキロフという39歳の男で、ISIS の思想に共感し攻撃前にISIS に加わったと発表されました。

スウェーデンではウズベキスタンなど、中央アジアからの移民も多い点が、これまで僕が長期滞在してきた北米や他のヨーロッパの国々と異なる点でした。

犯人は直前にトラックを盗難、止めに入ったドライバーを轢き、歩行者天国の Drottninggatan を歩く人々を次々と襲い、デパートに突入しました。

この事件で4人が亡くなり、15人が負傷(うち9人が重傷/重体)するという、治安の良いスウェーデンでは考えられなかった痛ましい事件が起こりました。

 

この犯人は2014年に亡命申請し、2016年に却下。それ以来不法滞在を続けていた人物で警察がずっと行方を追っていました。

また宗教的に強い信仰を持っていたわけでもなく、「イスラム国の思想に共感」というここ数年ありきたりになってきた犯行理由は、あまりにも身勝手で「難民申請が却下されたことによるただの腹いせでは?」という声が多かったのを覚えています。

なくならない移民排斥と襲撃

今年に入り、また世界中でソフトターゲットを標的にしたテロが頻発するようになり、僕は当時のこと(ストックホルムで起きたテロ)をよく思い出すようになりました。

LINKスウェーデンライフ(移住、留学、ワーホリ …)

直近で起こった2件、

3月 ニュージーランド中部クライストチャーチの銃乱射事件
4月 スリランカ連続爆破テロ

は報復合戦(ISIS に忠誠を誓うグループのテロ行為に対する報復、とそれに対する報復)、とニュースで報道されています。

1つ気になったのは、ニュージーランド銃乱射事件の犯人(オーストラリア人)は、2017年に欧州を旅行中、スウェーデンで起きた外国人労働者によるテロ事件を契機に、移民排斥を決意。

11歳のスウェーデン人少女が、イスラム過激派思想(ISIS)に共鳴した人物のテロに巻き込まれて死亡した事件を挙げ、自らのテロ行為を正当化するに至ったようです(Source: AFP BB News)。

僕はこのニュースを見た時、「ISIS の過激派思想に共鳴した犯人=イスラム教徒と関連づけるため、白人少女が犠牲になった事実を引き合いに出している」と感じてしまいました。あくまで個人的に感じた印象なので間違っているかもしれませんが。

では引き合いにだされた、スウェーデンの人々の当時のテロに対する反応はどうだったのでしょうか?


国としての惨劇に悲しむ人々

Uppsala Career Tour から Stockholm に戻り、事件の発生した場所へ行くと、まだ事件の2日後だったこともあり、テロで使用されたトラックによる生々しい傷跡が残っていました。

多くの方々がテロで犠牲にあった人々を悼み、献花やメッセージを残したり、事件への対応を迅速に行なってくれた警察官にお礼を言っていたり、涙を流す人々も多かったです。

この場所に来て何も考えずにボーッとその光景をみることしか僕には出来ませんでしたが、隣で涙を拭うスウェーデン人女性と少しだけお話をしました。

彼女はスウェーデンで生まれスウェーデンで暮らす、外国にバックグラウンドを持たないPure Swede  だと言っていました。

連日犯人のバックグランド(難民)や、思想(ISIS )が取りざたされ、極右グループ(人々)を刺激してしまうことを心配しており、今自分達がすべきことは2度とこのような惨劇を生まず、また関係のない人々を事件と関連付けて責めたりつまはじきにすることを避けるべき」だと話していました。

僕が事件について尋ねた人々(友達やクラスメート)は概ね同意見で、犠牲になった人々に対する悲しみと、国としてこういった大惨事を起こしてしまった悲しさや虚しさのようなもの嘆いていたのが印象的でした。

スウェーデンという国として、悲しむべき出来事だという愛国心のようなものを人々から感じました。

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テロが起きた国に住むイスラム教徒の青年との会話

Uppsala Career Tour Oracle 訪問時に、ストックホルムの事件を知り、その後1時間の休憩が設けられました。僕は Oracle Dublin の前の川沿いを男子メンバーの Aras と散歩をしていました。

彼はイラクをバックグラウンドに持つスウェーデン人で、旅の途中からよく話す間柄になっていました。アジアに興味を持ち、特に “Art of War(孫子の兵法)” など中国の古い歴史が好きな青年でした(僕も三国志や項羽&劉邦については割と知っています)。

テロ事件を知ったあと彼が「Tada が外国人だから逆に話しやすいんだけど …」と切り出してくれたのは、イスラム教徒としての居心地の悪さでした。

ヨーロッパでこういったテロがある度、犯人がイスラム国に影響されて犯行に及んだって報道されるんだけど… その時いつも “イスラム過激派” って言うだろ?俺たちイスラム教徒はそれがすごく嫌なんだ。俺たちはそんな暴力的な手段は絶対使わないし、彼らの思想はイスラムから大きく外れてて、イスラムっていう文言さえも使って欲しくないんだ。もちろん俺の周りのスウェーデン人が関連付けて何か言ってくることはないんだけど、何も言わないことが「どう思ってるんだろう?」って不安になる時もぶっちゃけあるし、とにかくすごく悲しいことなんだ …。

彼は次のセメスターでカナダのモントリオールに留学予定でしたが、この事件がキッカケで留学をキャンセルしました。

「何かイスラム教徒としてスウェーデンに貢献できる活動を模索したい」と決断したことを、学校でカフェしている時に告げられ、僕はすごく驚きました。

彼なりの覚悟で、非常に正義感の強い青年でしたので、彼が語ったイスラム教徒としての悲しみやツラさは本当に大きいものなんだと伝わってきました。

そんな Aras ですが、昨年末訃報が飛び込んできました。

多くの人々から愛され、新たな活動に情熱を持って取り組んでいた彼の急逝はあまりにも悲しいですが、彼との会話は “弱い立場に置かれる人々はいつもどこかにいる” ことにあらためて気付かせてくれました。

先ほど触れたように、スウェーデンにいた頃僕の周りでは、テロが起こった時に一部のマイノリティを非難するような声を聞くことは皆無でした。むしろ、そういった弱い立場の人々を守ろうとする声が強かった程です。

しかし一方で、ニュージーランドテロ実行犯のように、移民排斥を叫ぶ人々の集団もスウェーデン国内で増えていることも事実でした。

実際にそう叫ぶ集団をストックホルム郊外で見た時は、僕の知るスウェーデン人ではないようで驚きました。

ストックホルムでテロ発生時の公共交通機関

ストックホルムでテロが発生した時に気をつけなければならないことは、あらゆる公共交通機関がストップし、駅から立ち去らなければならないということです。

事件が起こった日、僕が所属していた SUP46 では毎月1度の Happy Hour (一般客も参加できる飲み会)が開催予定でした。

通常準備は15時過ぎから始まりますので、Uppsala Career Tour に参加していなかったら、間違いなく僕はその日ストックホルムにいました。

SUP46 から事件現場までは徒歩で5分で、毎回通り過ぎていた場所でしたので今考えると恐ろしいですが、ウプサラへ戻る電車がなく、途方に暮れている自分を容易に想像出来ます。

その日結局 Happy Hour は中止となり、帰宅難民者向けに1晩場所が解放されたそうです。こういった緊急時には、SUP のように場所を解放してくれる施設や機関も多いので、Facebook 等での情報収集は必須となります。

LINK【ストックホルムテロ対策情報】2017年にテロのあったあの通りは今

ストックホルムテロ情報

ストックホルム、スウェーデンでは2年前のトラックテロ事件以降、テロの報告はされていません。しかし、難民としてやってきた中央アジア人によるテロ計画や、テロリストグループへの送金などは現在も発生しているようです。

昨年、スウェーデン国内でテロ計画、準備、ISIS 支援者への送金容疑でウズベキスタン人、キルギスタン人など6名が逮捕されました。

恐ろしい話ですが、数百キロの化学薬品で爆弾やガスを使ったテロをストックホルムで計画していたようです。彼らの裁判は今年1月から始まり、事件の全容が解明されることが望まれています。

僕自身7月に本国へ行く用事がありますので、十分気をつけたいと思います。

LINK【ストックホルムテロ対策情報】2017年にテロのあったあの通りは今

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