これまで海外生活をしていた時に、家族でその国に移住してきた人達に出会う機会が多くありました。
新たな環境に、しかも子供を含んだ家族帯同で移住することは、大変な苦労があることを知る機会となりました。自分自身が独身ということもあり、当然リスペクトしまくりです。
ウプサラ在籍時代に、プログラムの多くの時間を共にし、一緒にプロジェクトに取り組んできた Nataly もその一人。修士課程をこなしながら、母親として異国で育児に励む尊敬すべきパートナーでした。
そんな彼女と先日久々に食事をする機会があり、当時子育て面で苦労したことや、その後の変化など色々とそして意外な話を聞くことが出来ました。
これからスウェーデンに移住を考えられている方や、その他のヨーロッパの国に移り子育てをする予定の方、この記事が参考になれば幸いです。
国内一国際色豊かゆえの苦難
ウプサラという街はこれまでもお話してきた通り、非常に国際色が豊かです。一番大きな理由は、やはりスウェーデンを代表する教育・研究機関(ウプサラ大学)が拠点を置く点にあり、そこに通う学生や研究者が世界中から集まることが挙げられます。
当然、それらの学生や研究者は若い独身者だけでなく、子供を持つ人達も多いです。その場合、ウプサラの幼稚園や(日本の)小学校にあたる基礎学校へ子供を通わせることになります。
このスウェーデン随一の国際性豊かな街を歩くと、人種の異なる子供が元気よく遊んでいる姿をよく見かけます。
様々な人種が混ざり合って、スウェーデンを象徴するかのような光景です。
「なんかええ感じやな」
そうつぶやき、おそらく子供も様々な文化を体感しながら、のびのび成長出来るんだろうと僕は簡単に考えていました。多様性の豊かさが、子供の発育にプラスに働くだろうと。
しかし、Nataly 曰く、それはウプサラでは全くの逆に働いていたようです。
スウェーデン語を話せない外国人の子供
Nataly には Sebastien という男の子がいます。彼女がウプサラ大学に通っていた頃は、まだ4歳児でスウェーデン語を話すことが出来ず、母国語のスペイン語(出身はボリビア)と英語を話せるだけでした。
「話せるだけ」という表現をしたのは、語学能力の高い低いを揶揄したのではなく、「スウェーデン語」を話せないという状況だったことを強調するためです。
ウプサラで「スウェーデン語を話せない」イコール、自動的に現地のインターナショナルスクール(移民家庭の子供が集まる学校)に通うことになり、Sebastien はそれぞれ国籍の異なる非スウェーデン人の子供達と学校で学ぶことになりました。
僕は Sebastien に気に入られていたようで、よく公園でピクニックやサッカーをしたり、僕のアパートに招いてご飯を食べたりもしていました。週一で遊んでもらってたので、僕的には友達の子供というより、普通に友達という感覚でした。
人見知りをすることなく、気配り上手な男の子で、「やはり多様性のある教育環境が彼の素晴らしい人間性を創っているのだろうな」と勝手な解釈をしていました。
しかし、Nataly との何気ない会話から、それが思い込みであることを知らされました。
移民家庭の子供が集まった学校
ーーー Sebastien 久々に会ったけど、相変わらず優しくて、気配り上手だよね。やっぱりウプサラ時代に通っていた幼稚園の環境が良かったんじゃない?小さい頃から色んな人種や考えの違いを持った人と交じわってて。
Nataly:Tada… 言ってなかったかもしれないけど、当時 Sebastien はクラスメートからイジメを受けてたのよ。そのことでよく担任の先生に相談して、なんとか環境を変えられないか努力したんだけど、結局どうにもならなかったわ。
ーーー えっ!?なんで?こんなに優しい子なのに。
Nataly:私達南米人だから、Sebastien も肌の色が小麦色じゃない? そういうところをバカにされて肩を突っつかれたり。それが次第にエスカレートして Sebastien に暴力をふるうようになっていったの。先生も色々努力してくれたんだけど、スウェーデンの教育環境って子供がいけないことをしても大声をあげて叱ったり、当然手を出したりも出来ないから、なかなか解決出来ずに大変だったわ。
ーーー 大変だったんだね。スウェーデンの子供達って道徳教育が行き届いているイメージがあるから、特に国籍や肌の色で差別を受けるっていう状況を想像するのが難しいんだけど …。
Nataly:そう、まさにそこなの。Sebastien はスウェーデン人の子供のいない学校に行ったことが大きいの。言いにくいんだけど … ある(途上国)地域の移民家庭って、親が子供をしつけや教育するっていう感覚が乏しいって思うの。実際に先生がイジメをしていた子供の親達に話をしてくれたんだけど、「何が悪いの?」って悪びれた様子もなく、当然子供を注意することなく放ったらかしにしてたから。それが彼らの文化なのかもしれないんだけど、「郷に入っては郷に従え」って言葉があるじゃない?きちんと親が子供を躾ける習慣のある国に来た以上は、努力すべきだと思うんだけど …。
ーーー そうだね、文化っていうより子の躾って親の義務だもんね。
Nataly:見た目で偏見を持たないとか、友達に暴力をふるわないとか、そういったお家で教える義務を怠った人達が多いのも、移民の多いスウェーデンならではの現象だと思うわ。さっきの子供の話だけど、授業中に暴れたり、勝手にクラスからいなくなったり、私の目から見てとてもじゃないけど良い教育環境とは言えなかったわ。当然、先生もアップアップ。だから、さっき Tada が言ってたように、色々なバックグラウンドを持つ子供が集まる学校へ行くことは、それはそれで子供の発育にメリットもあると思うんだけど、それ以前に落ち着いて勉強をする環境が整いにくい傾向があるんじゃないかしら?
ーーー Sebastien は大丈夫だったの?
Nataly:Sebastien は強い子だから大丈夫だったんだけど ….。やっぱり頻繁に小突かれたりすると我慢出来なくなったみたいで、やり返したりして彼らといざこざが増えていったわ。Sebastien は体が大きいから、暴力を振るうと「逆に相手に怪我させてしまうんじゃないか?」って、不安になって叱ってしまったこともあったの。「向こうが自分をバカにして手を出してくるのに、どうして自分は我慢しないといけないんだ」って泣いてしまったこともあったわ。本当に辛い思いをさせてしまったわ。Tada、でもこれが現実なのよ。スウェーデンは教育水準が高い、子供の躾も行き届いているって私も思っていたの。でも私達外国人の場合、そう安心してあまり深く考えずに子供の学校を選んだら、痛い目に遭うことを身をもって体験したわ。」
引越しを決意
その後、あまり状況の変化が見られなかったこともあり、Nataly は Sebastien の環境を変えるため、ウプサラの街を出ることを決意します。
このウプサラを出る過程については、近年街の治安がギャングの活動の活発化などで悪化していることなども関係していますが、1番は Sebastien の学習環境を変えることが大きかったようです。
当然、全ての移民家系がそういうわけではないことは、彼女も強調していました。が、一方でやってきた国のバックグラウンドや、文化が “集団 “(学校環境)に強く影響することも、実体験として訴えかけていました。
この点については僕にとっては盲点でした。
そんな Nataly がこれからウプサラやスウェーデンで育児をする方々にアドバイスとして言うのが、子供が入る可能性のある学校は、「可能な限りスウェーデン人率が高いこと」を挙げています。
その理由は … LINK【スウェーデンで子育て】 Nataly が移住組に Täby をおすすめする理由