スウェーデン・パラドックス曰く、スウェーデンの社会に大前提としてあるのが

人間を守る社会

というコンセプトです。これは

努力するものが損をみない ‘フェア’ な社会

必ずかかる費用・負担は国が責任を持って扶助し、いかなる状況でも人間として最低限の生活を営むことが可能な社会

の実現を目指したもので、失業保険, 疾病, 障害, 高齢者福祉, 子供の保育, 教育, 医療, 高等教育, 年金など多くの面でしっかりとシステム作りが行われていることが見受けられます。図にするとこんな感じですね。

恐ろしく ‘和テイスト’ な図になってしまいました。ちなみにスウェーデンを漢字で表すと ‘瑞典’ となります(こんな名前の女の子クラスにいましたよね、絶対に可愛いやつ)。

以下のメモはスウェーデン・パラドックスの内容が95%で、若干僕が現地で得た情報を付け加えています。

失業保険

・最初の200日間=働いていた時の給与の80% / それ以降の100日までは70%に減額される

・通常は300日(平日のみの給付なので14か月に相当)で給付が終わるが、18歳以下の子供がいる場合、さらに150日間の給付延長がなされる(70%)

・上限があるため、給与が高かった人は80%もしくは70%の額を受給できるわけではない。(上限 ¥8,840/日) (この上限の改定が頻繁に行われず低水準であることが問題であるため、2010の総選挙で多くの党がこの引き上げを公約に)

・モラル・ハザードを防止する取り組み(日本はこれが弱い)
(積極的な求職活動や必要に応じた職業訓練を受けることが受給条件)
(時間の経過とともに減額される失業給付)
(職安の紹介した仕事は、正当な理由がない限り承諾しなければ失業保険が減額・停止される)

疾病・障害

・ 障害者も円滑に就労ができるよう様々な支援が与えられている

・ 失業や疾病といったリスクも、一人ひとりの責任とは別の理由で起こることが多いため、社会保険という形で所得保障を行っている

・ 家族介護を頼れる家庭があらず貯蓄もない高齢世帯は非常に惨めな老後生活を送らざるを得ない(=日本)故に、福祉サービスも社会化し、自治体が責任を持って提供 (これは家庭介護のもとではその担い手となりがちな女性の社会進出を考えた場合にも理に適うものである)

高齢者福祉

・ スウェーデンは先進国の中でも早い時期から高齢化が進んできた(第二次世界大戦に参戦しなかった数少ない国の一つで当時の若者の損失が少なかった)

・ 在宅介護サービス/ 施設(介護のついた特別住宅)入居者に対する介護サービス/ ショートステイのサービスに分かれ充実している

・ 一方で、福祉サービスの充実が核家族化を加速させている(子供が「自分達子供のサポートが無くても親は暮らしていける」という意識になりやすい)

子供の保育や教育、医療

・これらのサービス(育児休業手当含む)にかかる費用は事実上ゼロ (そのサービスを自治体や国が無償で提供している)

・全ての国民が同じ水準の生活ができ、結果国際的に見ても世代間の階層移動が比較的大きい (子供の所得と親の所得の相関が低い。自分の世代が貧しくても自分の子供は裕福になる可能性が高く、よって逆進的な負担に対する不満が生まれにくい理由の一つになっている)

・性別に関わらず自分の就きたい仕事に就き、家庭と仕事の両立ができるように育児サービスや育児休業保険制度の充実が図られてきた

・育児休業手当のおかげで、子供が1歳半~2歳になるまでは、在宅で育児ができる (「まず親との愛情の絆をしっかり築いてから外の世界に出ていくべき」で「0歳児保育は早すぎる」という声が多い)

補足情報として、子供がいるクラスメート(ボリビア人)に聞いた話では、

・高校卒業するまでは学校で食事が提供される(朝の軽食・昼食・午後の軽食)

・幼稚園では ¥2,600/月 で時間延長して子供を預けられる(親が働きやすい)

とのことです。赤ちゃんがある程度大きくなるまでは親の元で育てられ、それ以降は職場復帰しやすいよう国がしっかりと制度作りをしているのが分かります。

高等教育

・ 教育哲学として「人に対する投資は、人を助けるだけでなく、国際競争力の強化につながる」というコンセプトがある

・ 公的教育支出の対GDP比率 6.1% (日本 3.3%)

・ 義務教育から大学(3年)・大学院(1年または2年)など高等教育に至るまで完全無償化が実現されている

・ 大学教育は極めて実学志向が強い (職業訓練的な要素が重視され、労働市場で即戦力として期待される *高校を卒業してからすぐに大学に進学する学生はそれほど多くない。働いたり、旅をしたりなど) 。
→ 弁護士などでも特別の国家資格を取らなくとも大学の専門課程を卒業するだけでよい
→ 一度働き始めたものの不足する技能を補うために大学で学ぶことも一般的である

・失業後、大学に戻って専門知識を身につけてワンランク上の職業を目指す人も多い
→ 個人の能力向上を重視するシステムのもとで、労働者は変化を受け入れるようになり、これがスウェーデン経済全体の構造転換を促す原動力となった。

そして、まことしやかにささやかれていた「スウェーデンは学生が国からお小遣いをもらえる!?」という噂ですが、これは本当です。

・ 教育が完全無償化だけでなく、高等教育期間在学中は毎月日本円で約3万5000円国からお小遣いが支給される(5年間)

この支給期間5年というのは、大学卒業後働き出し、しばらく経ってから大学院(1〜2年)で勉強しなおしたい時にも、金銭的な負担でそれが出来ないという事態を軽減する狙いもあるようです(スウェーデン人の友人談)。実際、クラスには僕より年上(40歳前後)が数人いて、国のシステムには感謝していました。

すごいです、本当に。

年金

・ 稼ぎが多いほど受給額が増える所得比例年金

・ 若年期に購入が強制されるが老年になれば取り崩しができる一種の金融商品であり、有利な貯蓄手段とも言える →より多くを積み立てるため自分の所得を多く申告する傾向まであると言われる

・ 自営業者も自分の申告した所得に応じて年金権が加算され、年金保険料を納めるため、正確に所得を申告するインセンティブを高める結果となる

・ 最低保障年金が満額支給されるのはスウェーデンに40年間居住した場合のみ。
→移民、難民が住居費を支払った後に手元に残る額が「妥当な生活水準 」を下回った場合、その不足分が生活保護として支給される(単身者: ¥ 62,000/ 夫婦=一人当たり¥52,000 → 妥当な生活水準)

・ 年金財政そのものは絶対破綻しない仕組みになっている

・ 納める保険料が給与所得に比例しているため受け取る年金の額も現役時代の給与に比例することは確かだが、経済の低迷が長引いたり高齢化の進捗が早い場合には、基金に毎年納められる保険料と支払いとして基金から出て行く額のバランスが崩れてしまう。このような場合には、年金財政を安定化させるために自動的にブレーキがかかり、年金の額が減額されることになる。これが「自動財政均衡メカニズム」という仕組み

・ 公的年金基金が運用する所得比例年金については、賦課方式が採用されているため、その年に徴収した保険料はその年の年金受給者への支払いに充てられる(約4年分の年金支払いに相当する積立金バッファが準備されている)他方、保険料を納める個人ごとに概念上の年金口座が設けられ、保険料の支払いに応じて年金権(年金ポイント)が貯められていく。そして、ある世代が年金受給年齢に達し、国が年金給付額を決める際には、その年金権に比例する形で給付額が決まる。これが「概念上の拠出建て」と呼ばれる考え方になっている。

まとめ

✔これらの社会保障給付費(対GDP比)は29.4%(OECD平均20.6%、日本18.6%) とりわけ「疾病・障害」「家族・育児」の割合が高い

✔ しかし個人が負担する社会保険料負担は実質ゼロ 7%の年金保険料があるが、全額が税額控除される仕組み → 事実上雇い主のみの負担

✔ 一方で「手厚い社会保障」=「手厚い社会扶助」ではない 社会保障支出に占める生活保護など社会扶助の割合は極めて小さい(わずか4% ’07)→ 働かなければ手厚い給付は得られない、(とりわけ生活保護に関しては)「働かざるもの豊かになるべからず」の哲学が貫かれ、真に必要な人に限られている
*社会保障の中心は「社会サービスの現物給付」と「社会保険による所得比例型の所得移転」

✔ ゆえに、税・社会保障制度は意外にも税負担や社会保障負担の大部分は、低所得者にも高所得者にも一定の率で課せられるフラットな定立負担によるもの → フラットな負担・給付=働いて稼がなければ最小限の給付しか得られないことを意味する(それまで働いてこなかった人や給与が少なかった人は最低限の給付水準に甘んじることになる)

✔ これらの「人間を守る」ための様々な政策が、旧い産業から新しい産業に円滑な労働移動を促すための理念「ソーシャル・ブリッジ」を支える仕掛けになっている