スウェーデンの「人間を守る社会」を支えるのが、失業保険, 疾病, 障害, 高齢者福祉, 子供の保育, 教育, 医療, 高等教育, 年金等のしっかりしたシステム作りであることを前回お話ししました。一方、これらの仕組みを実現するためには、豊富なキャッシュを生み出す産業を育てる必要があります。スウェーデンは実はその面でも進んでいるのです。

今日はスウェーデンの産業面の成功要因についてです。引き続きスウェーデンパラドックスの大事なポイントをまとめたものになります。

産業促進型社会

スウェーデンを代表する自動車メーカーSAABでさえも救済の対象にはならなかった

スウェーデン・パラドックスによりますと、

産業促進型社会(強い経済)が「人間を守る」社会を支える

という哲学がスウェーデン社会には強く根付いています。その結果、

 ・国が企業活動を強く後押し

 ・市場主義経済の原理の徹底

という、「応援するけども、きちんと競争して各々で強くなりなさいよ。だめな子は助けないわよ」的なユニークな資本主義経済システムが確立されてきました。プロ意識のようなものを感じます。これは僕個人が現地の小さな商売をするオーナーや大企業の事業部長クラスと話した時に感じたことですが、この競争のあり方も商売の規模や自治体との関係で非常にフレキシブルに違いがあるなぁと感じました。詳しくは後述します。

話を戻しまして、スウェーデンが産業促進型社会に至った経緯はいったい何だったのでしょうか?

苦難の70年代

The New York Times: Credit Adam Ihse/Agence France-Presse/
2009年SAAB社のリストラに対する従業員のデモ

背景としてあるのが第一次石油危機時、基幹産業だった造船・鉄鋼を救済したことが挙げられます。国際競争力を失いつつあったこれらの衰退産業を助けたことで、産業構造転換と技術革新が大幅に遅れ、国が窮地に追いこまれてしまったのです(=苦難の70年代)。

この経験は現在に至って、

 ・衰退産業は絶対に救済しない

 ・代わりにイノべーションによる成長を模索(環境、エネルギー産業、医薬品・医療機器分野などを中心とした)

と、失敗体験を教訓とした哲学になっているようです。結果的に、国際競争力を失った低い付加価値しか生み出さない労働集約的な産業や生産性の低い企業は淘汰されることになります。一方、より高い付加価値を生み出す資本集約的あるいは知識集約的な産業が成長していくことで、経済全体のパイが拡大していく仕組みになっています。当然、産業界や労働組合からの反発は凄まじいようです。企業再建に似たような環境ですね。

国内市場が小さい現実

参照: TRADING ECONOMICS
2013年GDP比較, アメリカ: 16.77兆ドル, 中国: 9.24兆ドル, スウェーデン: $5,790億ドル

GDPに占める輸出比率は54% (2010) と日本の18%に対して非常に大きなウエイトを占めています。これは官民の純粋な努力の結果で、

・製造業を中心とする企業の国際競争力強化に必死で取り組む

 ・国内経済を外に対して開かれた魅力的なものにしなければ、成長はおぼつかないことを官民ともに自覚

の2点が大きなポイントのようです。

ITインフラの整備

・携帯電話普及率100%超

 ・家計のパソコン保有率、インターネット・アクセス率、ブロードバンド・アクセス率なども70%超

→ 2011 WEF (World Economic Forum) IT競争力ランキング 世界第1位(日本21位)

→ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2010デジタル・エコノミー・ランキング 世界第1位

感覚的にですが、このへんは普段生活していて本当に強く感じました。お年寄りのITリテラシーが本当に高い!おじいちゃんもおばあちゃんもみんなサクサクっとインターネットで検索して情報収集しています。うちの親は最近やっと iPadを使いこなせるようになったので、複雑な気持ちになりました(スウェーデンが凄すぎるのか、うちの親が遅れすぎているのか…)。

電子政府(e-Government)への積極的な取り組み ︎

 ・全国民が e-IDカード保有 ︎

 ・行政手続きが自宅のインターネットで完結可能なシステムを導入
(納税、引っ越し、社会保障の受給手続き(児童手当、育児休業手当)、起業手続き等もインターネットで数分で終わる)

近年、日本政府も電子政府先進国のエストニアに度々訪問し、その成功要因を探ろうと努力しています。が、僕は個人的に日本の場合浸透するには相当な時間がかかるだろうなと思っています。というのも、全ての個人情報をデータ管理するのですから、そもそも政府機関が国民に相当信用されていないと、国民側が情報申告しないのではないのでしょうか?

スウェーデンの場合、早期にこのプロジェクトに取り掛かったことと、国民が政府を信用しているという点が電子政府を実現しているように感じます。