家族は限られた時間の中で延命するのかどうか選択を迫られる場合もあります。

自宅から搬送されてきた84歳の男性。すぐに人工呼吸器を付けなければ危険な状態でした。男性の呼吸が弱くなったため思わず救急車を呼んだ家族。元々は自宅で看取る予定でした。

医療スタッフ「こういう管を入れるんですけど、今後意識が戻らなかった場合には人口呼吸器を付けて生活していくことになります。」

家族・娘「人工呼吸器を1回つけると一生?」

医療スタッフ「それは分からないです。それはだから悩まれるところではあると思うんですよね。」

1度呼吸器を取り付けると、多くの場合意識が戻らぬまま延命医療が続くことになります。最期にどこまで医療を受けるのか?家族は本人と話していませんでした。

医療スタッフ「やっぱりだんだん悪くなってきたしということもあって、そこまで(人工呼吸器)は望まれないご家族もいらっしゃるので。」

家族・妻「どうしようかな。」

家族・息子「俺はつけた方がいいと思う。お母さんは?」

家族・妻「こういう状態、ずっと、かわいそうだな。」

家族・娘「どうする?相談する? … じゃあ1時間くら …」

医療スタッフ「じゃあ10分ぐらいお待ちしますので」

家族が戻ってきました。

医療スタッフ「今血圧がだんだん下がってきていて60台ぐらいなんです。挿管するかどうか決めていただけましたか?」

家族・息子「挿管お願いします」

家族・妻「お父さん見える?私分かる?」

家族・娘「お父さん頑張ってね。」

家族が選択したのは延命でした。男性はそのまま集中治療室に入ることになりました。

集中治療室にある30のベッドが、意識が戻らない高齢者で埋まることも少なくありません。

その後患者達は新規の病院に移ります。多くの場合延命医療が長期化していきます。

低い退院率

(東京・調布 多摩川病院)
この病院の60床ある療養型ベッドは延命医療を受けている高齢者で占められています。

多摩川病院・矢野諭理事長「ご本人自体がもう意識がない方、自分で自己決定能力のない方もいますので終末期をどうするのかというのはこの病棟をずっと続けていて時々悩むこともあります。」

この病院は高齢者のリハビリにも力を入れています。しかし救命救急センターから転移してきた患者でリハビリが出来るまで回復する人はほとんどいません。

ある調査では(京都府立医科大学 松山匡研究チーム調べ、全国の救急搬送87万人の高齢者の院外心停止を分析)85歳以上の高齢者で1度心肺停止になると、人工呼吸器などが外れ退院できる確率は0.5%です。

この病院に6年間入院している83歳の男性です。脳梗塞の後遺症で会話や意思表示が出来ません。胃ろうによって命を繋いでいます。

患者・妻「美味しいですかご飯?ご飯美味しいですか?」

毎日病院に通ってくる妻、夫の存在が自らの支えにもなっています。夫の手を揉む妻。

患者・妻「(指が)固まっちゃうんですよどうしても。だから動かした方がいいのかと思って。ねぇお父さん」



入院生活がいつまで続くのか。先行きは見えないままです。

患者・妻「お父さんまた来るからね。また来るから頑張ってね。」

患者・妻「どうなんでしょう、このまま病院にいたら至れり尽くせりで、ずっと生きていてもらって、苦労 … 苦のところもあるけどね。まぁ不安は不安ですけど、行けるとこまで行くしかないのかなって。」

番組出演者:阿川さん、NHK 井上アナウンサー、東京大学大学院 会田薫子特任教授(専門は臨床倫理学・死生学、長寿時代の終末期医療とケアを研究)

阿川さん「医学が進んでこうして延命治療が出来るようになったんですけどって、なんかちょっと複雑な顔をしてらっしゃったのが印象的なんですけど。」

会田薫子特任教授「今阿川さんがおっしゃったようにこれは良いのか悪いのか、延命医療ってどちらなのか迷われる方がとても多いと思うんですけれども、まず延命医療という言葉そのものには否定的な意味も肯定的な意味もないんですよね。延命医療といいますのは、生存期間を伸ばすための医療ということで、この伸びた生存期間を否定的に捉えるか肯定的に捉えるかは、それはご本人の生き方によるということが言えると思います。」

増えている80代・90代高齢者の透析療法に関しては?

会田薫子特任教授「透析療法が進歩すれば、それによって多くの方が社会生活を維持できるということがあるわけです。でも一方で認知症が進んでご自分で透析して下さいとは仰らない方にも本当に使うのか?先ほどの VTR でご本人の手が動かないように拘束しながらやってる方がおられましたけど、それは相当大きなジレンマだと思うんですね。本当にご本人のためになる透析療法とはどういうものなのか?それを考える時代になってきたと思います。」

阿川さん「お医者さんは(寿命を)無理やり伸ばしているプロセスだと分かっているんですか?」

会田薫子特任教授「そうですね、救急の現場では先ほどの VTR にあったようなケースでは、本当に自分達は適切な医療をしているかどうかについて大いに当惑している状態で、それが救命センターの現状です」

延命医療はやめられる 

NHK が独自に全国の289の救命救急センターにアンケート調査を実施(146の施設が回答)したところ、終末期の高齢者が搬送されることについて、86%が「問題ある」と回答。

大いに問題ある   31%
問題ある      55%
・それほど問題ない   9%
・問題ない       1%
・分からない・無回答  4%

この中では「大往生を迎えようとしていた人に対し高度延命治療がなされ、家族も誰もがやりきれない気持ちになる」=(患者の尊厳が失われていないか?)

阿川さん「例えばうちの母がお風呂で急に血圧が下がり失神した時に「あっ、こんなとこで死んじゃうの?」って救急車呼んだんです。」

会田薫子特任教授「それはもちろん119番していただくことが大事なんですが、先ほどのお話にあった方達というのは、在宅医療でこの方は最期まで過ごしていかれるんだなっていう風にご家族も思って看ていられたのに、「あっ」って思って、例えば家族が呼吸が弱くなってきたなって思ったら、家族としては思わず慌てて119番したっていうような時に、先ほどのような問題になることがかなり多いです。」

阿川さん「ただ家族にとっては救急車で運びました、その瞬間は助けて欲しいと。要するにこれが臨終の瞬間だとは思わないですよね。なんか助かるかもしれないと思ったら延命医療することになりました。けど、それが1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月と続くと家族としては、いったいこの判断は本人が望んでいたんだろうか?やめた方がいいのか?っていう風に思った時にやめられないですよね?」

会田薫子特任教授「いえ、やめられないとかつては思われていたんですけれど …」

阿川さん「変わったんですか?」

会田薫子特任教授「ええ、変わったんです。」

阿川さん「えっ、昔だって人工呼吸器をお医者様がやめたらその人捕まっちゃったと…」

会田薫子特任教授「一応容疑がかけられたということはあったんですけれども、警察も検察もしっかり捜査して、これは刑法の問題ではないということで不起訴になっていますので、そういう案件が2つあったんですけども、不起訴になっていてこれはもうその司法判断も決着が着いていると研究の分野では考えています。」

人工透析・胃ろう・人工呼吸器 → 延命医療の中止が可能に

実際に延命医療の中止という選択肢をを示す病院も出てきています。

ここ数年、医学会や国は延命医療の中止に関するガイドラインを相次いで発表しています。(人生の最終段階に置ける医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン/ 厚生労働省

終末期の患者

・人工呼吸器
・胃ろうなどの人工栄養
・人工透析

について医学的に終末期であると判断された患者の場合、

・本人の意思を尊重
・家族などとよく話し合う
・医療チームで慎重に検討

などを行なった上で、不開始・中止が可能となりました。

(長崎腎病院)延命医療の中止という選択が出てきたことで、重い問いに直面する家族がいます。

・數クミ子さん(82)/ 娘・竹永仁美さん

クミ子さんは1年前に人工透析を始めました。もともと透析を受けるか迷っていましたが、娘の仁美さんが孫の成人式に立ち会って欲しいと説得しました。

仁美さん「女の子だから振り袖姿を見たいって。だからまぁその時に見たかやろう?って言ったら、「うん、見たいね」って。じゃあ頑張ろうかっていうのが決断だった。」

ところが透析を初めて半年ほど経った頃、數さんに認知症の症状が表れました。數さんは透析をしなければ生きることが出来ません。一方、日に日に体力が衰える中で、負担が大きい透析をいつまで続けるべきなのか仁美さんは悩むようになりました。

孫娘は認知症を抱えながら透析を受ける高齢者達の姿を見て「ここまで治療するのは可哀想だ」と洩らしたと言います。

仁美さん「見てて辛いって自分が言うんですよ。母のことを考えると出来ないから本人が… 判断が。突きつけられるのはすごいツライ現実だけど、1人で決断しないといけないところがすごく悩みますね。」

人工呼吸器外す選択肢

救命救急の現場の中にはガイドラインに沿って、人工呼吸を外す選択肢を示すところも出てきています。

(帝京大学病院高度救命救急センター)心筋梗塞で運ばれてきた小澤敏夫さん。

人工呼吸器で命を繋いでいますが、意識が戻りません。家族はこの日、担当する医師から「小澤さんには弱い自発呼吸があるものの、意識が戻る可能性は極めて低い」と告げられました。

神田潤医師「やはり心臓が止まっていてその間、脳に血流がいっていない、酸素がいっていないところで脳のダメージが少なからずあった。」

人工呼吸器の管を抜き延命を中止することも出来ると伝えられました。

医師「いわゆる延命治療というか、そういくことはやめていってご本人の生命力を尊重するというか委ねると。」

家族「それこそ本人の寿命待ちという話ですよね。」

医師「そういうことになるかと思います。状況によっては抜管すると気道の問題で命が尽きてしまう可能性があります。管を抜くことによって、窒息とかを起こす危険があるというのは十分ご理解いただきたい。ちょっと1回お持ち帰りいただいてご検討いただくのがいいかなと。」

翌日、

医師「どういう方針に?」

家族「(管を)外していただくという方向で。」

医師「管を抜くという形でよろしいですか?」

家族「はい。」

家族は小澤さんが日頃から延命医療は望まないと話していたことから重い決断をしました。医療チームで検討を重ねた結果、家族の意向を尊重し管が抜かれることとなりました。

(管が抜かれる)

1時間後、小澤さんは静かに息を引き取りました。

阿川さん「家族に悔いが残ったりしたらツライですよね …」

会田薫子特任教授「そうですね、もしあの場面で「自分はお父さんの命を生きるか死ぬか決めなければいけないんだ」という考え方をすると、ご家族は大変苦しいと思います。とてもツラく感じると思います。ですけど私はここの場面では異なる考え方をするのがいいんじゃないかなと思っています。それは、延命医療を続けていくことが本人らしいのか、やめるのが本人らしいのか?最後は機械的に延長しているんですね。人為的な手段で持って命を延長している。このようなあり方は「そう言えばお父さんは自分で前嫌だって言ってたわ」っていうそういうことがあって、お父さんが言ってたことに反するなって思ったらそれはご家族の中で話し合って、これはもうお父さんらしく見送りましょうかって。これはツライ選択ではなくご本人の人生の集大成をサポートするためのみんなの大事な話し合いになると思います。」

阿川さん「選択するっていう時代になっちゃったんだなと思って。なんかちょっとそこの覚悟がまだ私の中では出来ていない気がします。難しい時代になっちゃったなと思って。」

「人工呼吸器などの生命維持装置」中止についての選択肢を患者や家族に示しているか?NHK がアンケートをとったところ、回答があった117の病院のうち46の施設が示していると回答があった。

会田薫子特任教授「私どもの研究班が10年前に独自に行なった調査と比べると、非常に増えていると思います。10年前は「人工呼吸器だけはやめられない」と思っているドクターがほとんどだったので、近年の変化もごく最近の変化であるということが言えます。」

一方で選択肢を示していると答えた医師からは

終末期であるにも関わらず最期どのように死にたいかが議論されていない

本人も家族も死を人事と思っている日本人が大部分で、急変時にどうしていいか分からないというケースが多い

阿川さん「はい、私もです。だってまだ死に方なんて選べないし…その時が来たら死ぬんだって、あんまり今考えたくないのが実感では?だって高齢の両親に聞いたら機嫌悪くなるでしょ?遺言書かせるのだって難しいですもん」

事前指示書

(長崎腎病院)そこで「最期の医療をどうするのか?」認知症や衰弱が進む前に考えてもらおうという取り組みが進んでいるのです。「どのような最期を迎えたいか?」これから受ける医療について自らの意思を示した人がいます。

瀬戸英龍さん(82)は重い腎臓病を患い人工透析に頼って生活しています。

瀬戸さん「この状態がもう少しあってもかまわないんだけど、あまり長くなると望ましくないと思っています。終期は自分で決めたいですね。」

瀬戸さんは病院から事前指示書という書類を手渡されました。医療をどこまで続けるか患者や家族の考えを記すものです。瀬戸さんは重度の認知症になった時には透析を希望しないと記しました。また透析中などに心肺停止になった時の心臓マッサージを希望しませんでした。

そして痛みのない安らかな最期を迎えたいと示しました(末期鎮静措置)。最近瀬戸さんは体の自由が効かなくなったと感じることが多くなりました。妻に重い負担をかける前に人生の終わり方を自分で決めたいと考えたのです。

瀬戸さん「妻に一番世話をかけているなと。妻の介護の手がなければ生活できんわけですからね。なんと申しますか、適当な時期までで勘弁して下さいって神様に申し上げたいです、お願いしたいです。」

しかし瀬戸さんの思いは長年連れ添った妻とは隔たりがありました。妻の千鶴子さんは夫の思いを受け止めながらも1日でも長生きして欲しいと願っています。

千鶴子さん「死を急ぐということに対してはちょっと抵抗があります。一緒にいたいなと思います。自分を追い込まないで長生きして欲しいなという気持ちが強いです。」

ACP

(京都・宇治)本人だけでなく家族も納得する最期の形をどう見出していくのか?医師などが積極的に関わっていく ACP (Advance Care Planning) という取り組みも始まっています。

在宅医の門阪庄三さん(医師)です。

80代、90代の患者の訪問診療を行なっています。この日はガンの手術をして自宅で療養している85歳の男性を診察しました。地元の医師会で作ったリーフレットをもとに患者と話をしました。

門阪さん「ここに延命処置って書いてあるんです。人工呼吸器とか心臓マッサージをして欲しいですか?それから負担になる処置はしないで一時的な点滴とか飲み薬くらいの治療にして下さいという方はこの辺にチェックを入れる。」

患者「それに丸ですね。」

門阪さん「そうですか。」

ACP では医師などの第三者が患者や家族と対話を重ね最期に望む医療を共に考えます。

門阪さん「奥様もだいたい私の説明でお分かりいただけましたでしょう?お互いが話し合いながら大事な人生を歩んでいただくと。」

門阪さんはこの活動の担い手を医師以外にも広げようとしています。

(高齢者福祉施設:ハーモニーやまはた/ 地域交流センターやまはた)

この日普段から高齢者と接している介護スタッフと勉強会を開きました。終末期医療をテーマにした海外のビデオを見ながら、普段から患者の思いを汲み取る姿勢が大切だと伝えました。

ビデオの内容:終末期医療を必要とする男性の娘(病院希望)と孫娘(在宅医療希望)で言い争いをする内容

門阪さん「決められない人がいたら周りで支えましょうというのが意思決定支援という考え方です。一番そばにいるのはご家族で介護福祉士さんだったり、ヘルパーさんだったり、避けないでぜひそういう話をしていただけるとありがたいなと思います。」

認知症などの病気ですでに本人の意思を確かめられない場合もあります。門阪さんは家族や介護スタッフの話から本人がどのような最期を迎えたいと考えていたのか探っていきます。

93歳の前川榮美子さんは6年ほど前から認知症が進んでいます。妹の幸代さんは ’住み慣れたところで静かに死にたい’ という姉の言葉を聞いていました。この日施設のスタッフを交えて、榮美子さんの最期の迎え方を確認しました。

幸代さん「今はもう幸せと思います。あまり苦しまずに私は楽にして欲しいと思うんです。」

門阪さん「何か前もってお話して置くことはないかな?それでいいかな?」

施設の職員「そうですね、前川さん(の家族)ともいつもお話もさせていただいていますので。」

門阪さん「あのー呼吸が非常に遅くなったりして、これはちょっともう生きるエネルギーが絶えてきたかなというときも、救急車はなるべく呼ばないで、私に一報下さってこの場で静かに最期を看取らせてもらおうと僕は思っているんですけど、それでよろしいですか?」

幸代さん「お願いします。」

門阪さん「(患者は)自分からこんなふうに死にたいとかこんなことは出来るだけやめて欲しいなとなかなか聞かれないと言えないということですよね。人から問いかけられたり逆に問いかけたりする姿勢、態度を(周囲の人は)失わないで欲しいということだと思います。」

家族との事前意思疎通

– ACP のような機会がもしもあったら自分の最期についてどう話し合いをしたいか?-

阿川さん「分からないですね。延命治療は父と同じでして欲しくないし、痛いのも嫌だけどどういう病気になるかどれほど長生きするか分からないですよね、どうして欲しい?って言われても。」

井上アナウンサー「実際に私の家でも実家で両親(父:75歳、母:74歳)とそういったこと話してみたんですね。初めて「どういう最期にする?」とか「どういう介護のあり方がいい?」って話してみたら意外と話が深まって「じゃあこういう風にしよっか」っていったん話が出来たんですね。内容も記録に残して、話してみると本音が出てきていいなと思いました。」

会田教授「とても重要なお話なので何かのきっかけで、この番組がきっかけでもいいですし、阿川さんがこんなこと言ってたけどうちでも話す?ってご家族で話していただけるといいと思うんです。」

先ほどの瀬戸さんご夫婦のケース(ご主人と奥さんで考えが違う)

会田教授「ですがあれは事前指示書を書いたことによって、夫婦の対話が出てくるきっかけになったということですので、そういう対話の促進役になれば事前指示書はとてもお役に立つと思います。そして対話している時に「実は自分の夫はこんなこと考えていたんだ、えっびっくり、私はそんな風には思わないわ」と対話の溝を埋めてくれるような(先ほどの門阪先生のような)役目の人が必要だと医療現場で言われています。」

実際にこの ACP の取り組み触れてみたい場合はどうすれば良いか?

会田教授「今、日本中の医療介護関係者の中で ACP への取り組みへの熱が高まっていて、勉強なさる方も相当増えています。ですので、まずお世話になっている医療介護の関係者の方に相談してみるといいかと思います。」

*厚生労働省 ACP で検索。

夫婦の会話が大事である=自分で死を決断する時代が到来したため

会田教授「医学の技術のおかげと言いますか、技術があってそれを使うことによって、人為的に命を延ばすことが出来るようになったけど、それをご本人が望むならそのようにする。そうでなければご本人らしく終わる。自分で考えるということがとても大事ですよね?」

今を生きる大切さ

最期に

(長崎腎病院)

命の終わりと向き合い、改めて気づかされることがあったという人がいます。

1年前から夫が人工透析を受けている松本さん夫妻です。松本光男さん(63歳)、妻・明美さん。

病院から手渡された事前指示書に初めて向き合いました。

明美さん「人口呼吸器の装着」

二人「希望しない」

明美さん「重度の認知症となり透析の継続は?」

二人「希望しない」

人生の最期を考える中で感じるようになったのは、「今を生きる大切さ」

明美さん「死に向かっていくよりも毎日毎日の生活を頑張っていかに生きるか、気持ちが切り替わっていったというか。だから病院側からこんなことを聞かれたのも結果的には良かったのかなと思って。」

人生100年時代、あなたも命の終わり方について考えてみませんか?

僕が家族と語ったこと

僕は今回の「人生100年時代を生きる」を両親に見てもらった上で、今後の我が家について話し合いを設けました。祖母に何かが起こった時、両親に何かあった時など、今まで家族の方針や意思疎通は普通の一般家庭よりかなり持ってきたつもりでしたが、それでも新たに考えなければならないことが多いことに気づきました。

また例えば両親に何かあった時、それが仮にまだ元気な60代、70代だったらどうすべきか?長男として決断する難しさも、今回の話し合いを通して疑似体験的に分かりました。

父「決断するのは難しいと思う。でも意思を聞いているのといないのとではその難しさが違う。自分もその面で苦しんだから…。」

僕の祖父は24年前に亡くなったのですが、亡くなる直前の3ヶ月間は病院でずっと寝たきり状態でした。パーキンソン病を患い、自宅で転び救急車で運ばれた祖父は、入院して最初の方は目も開いていたのですが、次第に病状が悪化し途中から排尿のために管を通したりと、見るのもツラい状況になったのをよく覚えています。

父を苦しめたのは、祖父の呼吸が弱くなってきた時に決断を迫られた、人工呼吸器の導入や、ノドを切って管を通すなどの医療行為でした。なぜならそれらの延命医療に関する祖父の意思を聞くことが出来ていなかったからです。

「寝たきり状態が続き、意識が戻るかどうかも分からないのにさらに体にメスを入れるのか?」父は悩んだ末にこれらの延命医療行為を祖父には施さない決断をしました。それは子供として「かわいそう」という気持ちと同じ位、祖父の意思を尊重したからだそうです。

仕事にしろ家族にしろ、何かを決める時はいつもこれから生きていく人間のことを中心に考えなければいけない。

それが祖父が父にずっと言い続けてきたことで、何より後世の負担になることを嫌った彼の意思だと父は判断しました。僕はこの言葉を聞いて、亡くなって24年も経つ祖父が今でも僕たちに学びを与えてくれているような気がしました。

それに感謝するとともに、この終末期医療に関する問題が、これから ‘超老齢社会‘ を迎える我々には避けて通れない課題だということを再認識しました。井上アナウンサーが言ったように、いざ話し出すと様々な面で意見が出てきて、話し合いが思った以上に建設的に進むことが出来ました。

今回の NHK のドキュメンタリーは、国の医療にかかる財政的な問題の国民への提起にとどまらず、人間としての葛藤に苦しむ医療関係者の叫びではないかと個人的に感じました。皆さんも家族で終末期医療に対する意思確認・話し合いを行なってみてはいかがでしょうか?

Source: NHK シリーズ人生100年時代を生きる(第2回, 命の終わりと向き合うとき)