スウェーデンがキャッシュレス社会の実現を、いち早く進めてきたことはすでによく知られています。 実際に現地滞在中は、超キャッシュ社会日本との違いに驚くことの連続でした。 カフェで現金が使えない、銀行でキャッシュをおろせない、クレジットカードを使って支払いを済ませることすら、「ちょっと遅れてる〜」な感じがしました。 思い出話ですが、中国人の友達がお店でパンを買おうとしていたのですが、お腹が減りすぎて支払う前にかじり付いてしまいました。 ところがどっこい、現金お断りで支払いが出来ない事態に(僕もたまたまカードを持っていませんでした)。 幸い後ろに並んでいた地元の方が「私が払ってあげるから、現金をちょうだい」と申し出て下さり事なきを得ました。 知らない人でも手を差し伸べるスウェーデン人の親切さと、現金が使えない進んだ社会、そしてお金を払う前にパンにかじり付く3つのカルチャーショックを同時に味わういい機会でした。 LINKウプサラ大学留学記 しかし、なぜスウェーデンはこんなにもキャッシュレスなのでしょう? それは彼らにはあの有名な Swish があるからです。

Swish

Swish はスウェーデンが誇るスマホ決済アプリのことですが、近年フィンテックサービスの代名詞として世界中で認知されるようになりました。

僕が SUP46 で活動していた時、多くの国の政府関係者が、スウェーデンのフィンテック事情を勉強しようと、 SUP のイベントに参加しては熱心に現地金融機関関係者に質問していたのを見かけました。

それぐらい Swish は側から見ていて利便性に優れていました。

これはもうすでにサービスとして真似されていますが、例えば友達と数人で外食した際の割り勘に Swish がよく使われます。まとめ払いした人に、スマホからアプリを通して送金するシステムです。

日本でも最近は paymo などのスタートアップ企業や LINE が Swish と似たサービスを展開し、このようなサービスの認知度を高めていますよね。

ですが、Swish の違いはその送金がリアルタイムで行われるところにあります。つまり、スマホで決済作業を完了した時点で自身の銀行口座から即座に支払った分がおちます。なぜか?

これは各スマホの携帯番号と銀行口座が Swish データで紐付けされ、さらに Mobilt BankID Säkerhetsapp という(口座を持つ複数の銀行により発行される)銀行 ID 番号を登録した別のアプリが連動して、番号と照合させながら決済作業を完了させるためです。

結果として、安全に電子決済を行なうことが可能なんだそうです。

LINK【Stockholm Fintech Hub】もし毎日フィンテックスタートアップと規制官、銀行マンがフィカ出来たら何が起こるんだ!?

サービス?社会インフラ?

そしてなぜこのようなリアルタイムシステムの開発が可能だったのかというと、スウェーデンの大手6銀行とスウェーデン中央銀行が、協業で Swish を開発したからです。

日本ではスタートアップ企業がフィンテックサービスの開発では先行し、そこに LINE など既存のテック企業が莫大な顧客データを持つ SNS サービスを武器に参入、現在は金融機関がフィンテック専門部隊を社内に構えたり、ベンチャー企業として立ち上げ&スピンアウトさせたりするなど動きが活発になってきています。

しかし、Swish は全国民が共通して利用出来る社会インフラとして開発されたのに対し、日本ではいちフィンテックサービスという位置付けではないでしょうか?スウェーデンで Swish が世代を越えて広く利用される様を見てきた者としては、日本のフィンテックは国としてバラバラ感があることは否めません。

ゆえに、スウェーデンのようなキャッシュレス文化が日本で成り立つには相当な時間がかかるだろうと個人的に見ています。それ以外にも世代を超えた IT リテラシーの高さなど土台がそもそも異なるのがスウェーデンです。

スウェーデンでは2012年のサービス開始以来、人口の6割以上にあたる650万人が Swish を利用しています。

  • 外でのランチ
  • 買い物
  • 路上パフォーマーへのチップ!?
  • 教会への寄付!?
  • 借金!?

などなど、本当に様々なお金の関係する活動に手軽に利用されています。

ところでみなさん、このキャッシュレス社会の実現は単に人間の行動の効率化を目指しただけじゃないのを知っていましたか?実は僕は知りませんでした。

つい最近、NHK のマネーワールドという特別番組でスウェーデンのことが取り上げられており、キャッシュレス=GDPが上昇するというデータが公開され非常に驚かされました。

内容シェアしますね。

驚異の現金流出率

スウェーデンの直近での現金流出量の割合は、名目 GDP 比でなんと1.3%。 多いの?少ないの?となるかもしれませんので、日本や他国と比較してみましょう。 日本 :約20% 先進国の平均値:約5% スウェーデン :1.3% LINKスウェーデンライフ(移住、留学、ワーホリ …) いやいや日本多過ぎやろというのと、スウェーデン低すぎやろという感情が交わり合っていったい何が正しいのか分かりません。そう、何が本当に正しいのでしょうか? 効率化の流れという側面ではキャッシュレスの波は避けられません。 事実、世界では現金流通量は減少傾向にあります。クレジット、デビットカード、あるいは電子マネー、お財布機能のついたスマホの普及です。そして高額紙幣は犯罪やマネーロンダリングに利用されることから、廃止する国が増えているのも事実です。 【キャッシュレス海外生活で必須】Amazon Mastercardゴールド(最大2.5%ポイント還元) 日本では今もキャッシュ率が20% を超え、しかもお札の流通量が毎年増加傾向と世界のトレンドとは逆行した流れなのです。政府は独立しているはずの日銀と手を組み市場にマネーを供給、円安誘導し、株価を吊り上げているとアメリカの大将もプンプンです。 -日本 ・GDP:500兆円 ・国家予算:100兆円 ・お札の発行残高:100兆円超え ・個人金融資産:1,800兆円 一方、スウェーデンでは先ほども申し上げましたように、2012年以降 Swish を国の社会金融インフラとして普及に努めてきました。結果、世界トップレベルでのキャッシュレス社会が実現し、なんとGDP が24%上昇したという調査結果も報告されています。 ニクラス・アービットソン教授(スウェーデン王立工科大学 准教授/キャッシュレス研究の第1人者)は人々がキャッシュを使わずデジタルでお金を支払うことにより"モノを買う心理的なハードルが下がる"と考えます。 「デジタル決済だと人は頻繁にお金を使う傾向があることが明らかになってきました。経済にポジティブな影響を与えるのは間違いありません。産業や社会にお金を回すには現金をなくすことはとても有効なのです」

さらなる進化

スウェーデンに興味がない方も聞いたことがあるかもしれません。スウェーデン人は IC チップを体に埋め込んで生活している。答えはイエスです、まだまだ普及段階だとは思いますが。

IC チップ

  • 電車の改札ゲート
  • オフィスのセキュリティゲート
  • コンビニ、スーパーでの支払い

など様々な場面で使うことが可能なようで、「面倒な携帯を出す作業が省かれる」と宣伝されていました。

「携帯出すことすら面倒ならじゃあ何が面倒じゃないんだ?」とアンチ過剰効率主義者な僕は感じるのですが、やはりテクノロジーの進展は止まりません。

それにしてもこんな太っとい針を突き刺して …. 。

しかしこのサービスが近い将来新たな世代で広まり、本当に Swish のように国民の6割以上が使うようになるならば大きな意味で人間の生活は新たなステージに向かいますよね。良くも悪くも。

そりゃ痛いやろ … 。

話をキャッシュレス社会に戻すと、この現金を使わない社会の実現は経済的な側面だけでなく、治安面でも効果を発揮しているようです。

The Swedish National Council for Crime Prevention の調べではスウェーデン国内の銀行強盗の発生件数は

2008:160件弱 → 2017:10件台

と、過去10年で10分の1以下に減少し驚異的な効果を発揮しているようです。

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余談ですが、ドイツに住んでいた時驚いたことが、あの技術大国ドイツも日本同様キャッシュレスが進んでなかったんですね。色んな店舗で「クレジットカード禁止」と現金支払いを求められ、それはそれで不便ではありました。

日本とドイツ=現金主義。敗戦国であることと何か関係があるのでしょうか?それとも貯めれば貯めるだけ現金が増えた銀行高金利時代の名残でしょうか?

ご存知の方、ご教示いただければ幸いです。

ところで、そんなキャッシュレス先進国スウェーデンで、クレジットカード決済端末機が壊れたら、どれくらいの影響があるのかを確認することが出来ました。こちらも合わせてお読み下さい。

LINK【やっぱり現金社会!?】キャッシュレス先進国スウェーデンでクレジットカードリーダーが壊れたらこうなった

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