給料を受け取るか否かは博士課程に進む個人の状況によりけりのようですが、「受け取る」契約で進んだ場合、その研究室にとって給与の支払いは義務となり、何とかその原資を捻出しなければならないそうです。
また、給料の額は大学や学部によってまちまちのようですが、一般的に25万円前後が支給されるようで、初めて聞いた時には「スウェーデンでは大学生にお小遣いが支払われる」のを知った時くらい驚きました。
「日本の新卒より高いやないすか」
そう僕が言うと、
「そうなのね。にしても25万円前後なんていくらなんでも低すぎるわ」
と言われ、さらに驚きました。
詳しく聞いてみると、修士過程を修了し就職した場合、月30万円以上を期待するのが暗黙の了解(彼女の周りでは)のようで、一旦キャリアをストップしさらに給料が下がるという事実に不満を持っているようでした。ちなみに当時このクラスメートは博士課程に進もうかどうか迷っていました。
そんなスウェーデンの博士課程の懐事情を知ったある日、僕が一番好きだったコースの講師カタリーナがその会話を聞いていたようで、
「Tada は博士課程に興味があるの? 今日博士課程の研究生の論文ディフェンスがあるんだけど、見に来たら? 私も審査官のうちの1人なの。」
せっかくの機会ですので見に行ってみることにしました。
外部教授がプレゼン
これはスウェーデン全土がそうなのか、ウプサラだけなのか分かりませんが、この日見た博士論文デフェンスの様子は、僕が思い描いていた(聞いていた)それとはほど遠いものでした。
僕が思い描いていたディフェンスは、暗い部屋で厳しい表情の虎達(審査官)が矢継ぎ早に執筆者に質問や批判を浴びせ、それを冷や汗かきながら何とか論破するというものでした。
しかし、ウプサラで見たものは
- 論文プレゼンターが赤の他人
- 論文プレゼンターがニコニコしながら論文の中身を説明している
- それを執筆者が立ってニコニコ聞いている
でした。
「めちゃめちゃホンワカやないすか!」
僕は大声で叫びました(嘘)。外部プレゼンターはスイスのジェネーバ大の教授のようで、論文の内容をしっかり理解し、彼女自らパワポを作り発表していました。
その後、プレゼン内容が問題ないか、補足説明が必要かを論文執筆者に問い、執筆者が追加説明をするというプレゼンでした。
続いて始まった質疑応答も殺伐というよりは、ただ質問に答えるという具合で、そんなにエキサイトしたものではなく、小一時間程度で全て終了。
全てをこなした執筆者の男性に、見事ディフェンスをパスしたことが告げられます。
その瞬間、このプレゼンを一緒に聞いていた友人か同僚数名が、真ん中の舞台にかけより執筆者と抱き合います。ジュリー達も拍手喝采です。
執筆者は指を天へ掲げ(まじ)、その光景はまるで優勝を決めたアメフトチームのように見えました。
「何やこれ」
そう心の中でつぶやき、僕は足早に教室を後にするのでした ….
… 何やこの記事。