世界初の自転車用エアバッグ式ヘルメット Hövding が開発されたきっかけの場所は、スウェーデンの誇るイノベーションの街、ルンドでした。

2005年、ルンド大学工学部(Master)に所属していた2人の学生(創業者)が、自転車事故に関する加速度計データの比較をテーマに修士論文を仕上げたことが、このスタートアッププロジェクトの始まりだったようです。

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製品そのものは2011年11月に正式にローンチされ、これまでになかった発想やデザイン性からすぐさま話題となり、スウェーデンを代表するイノベーションとして今日まで多くのメディアで取り上げられてきました。

今日はその革新的製品の今を追った記事です。



Hövding

Hövding の創業者は、当時スウェーデンで急増していた自転車事故による被害の縮小を目的に、1,000 件以上の自転車事故データを収集、分析。

実際にバイカーの行動を何百時間も追跡し、自転車事故においての人間の行動をデータベース化、そこにエアバッグ技術を組み合わせることで、事故の直後に作動する自転車用エアバッグシステムを開発することに成功しました。

僕は最初にこの製品画像をたまたま見たとき、これがまさかエアバッグ式サイクリングヘルメットだとは思わず、「パリコレ用のお洒落なシャンプーハットかなんかだろう」と全く気にも止めませんでした。

ただ、なんとなくこのシャンプーの泡みたいな白い被り物が気になったので後で調べてみると、これが世界初の自転車用エアバッグで、しかも自分が興味のあったスウェーデン発の製品であることを知ります。

またこの時、ルンド大が同国で最もイノベーションの創造に力を入れた教育機関(当時)であることを知り、進学を望むようになりました。

Hövding は以前ここでも取り上げた、スウェーデン最大のスタートアップコンペ、 Swedish Venture Cup 2006 のウィナーで、それ以外にも数多くのスタートアップ関連の賞を受賞してきました。

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空港などで販売されている、スウェーデンのイノベーションを紹介する本「Sweden Just Amazing」でも取り上げられるなど、ルンド、マルモ、にとどまらず、国を代表するイノベーションと同国では認知されています。

本国スウェーデンでの販売

本国スウェーデンでは直営店を持たず、百貨店などのリテーラーを通じての展開になっているようです。国を代表する発明品にもかかわらず、シューズ棚の隣の狭いブースでディスプレイされているのが意外でした。

こんな感じにディスプレイされ、専門の販売員がいるわけでもなく、商品説明の動画が永遠に流れていました。明らかに注目は浴びていない様子。

このエアバッグ式サイクリングヘルメット、いろんなデザインが用意されているのが良いですね。最初の女性2人が写っている写真のように、洋服の組み合わせによってはネックウォーマーのようにも見えます。

ファッションスタイルにアクセントを加え、お洒落度アップになるかもしれません。ピーコさんに尋ねてみたいものです。

一方で、触ってみた感触は割とゴツいなというのが正直なところです。結構重いんですよね。これを長時間首につけてのサイクリングはしんどくないのかな?と疑問に感じました。

首を太くしたい方にはもってこいですが。



社会に浸透している?

ところでこの世界初サイクリング用エアバッグヘルメット、本国スウェーデン社会では浸透(一般的に使われている)しているのか?

正直なところ、答えは No だと感じています。実際、このヘルメットを装着してサイクリングした人を見たことはこれまで2回しかありません。

一体何が原因なのか?

その理由は地元のスウェーデン人の友達や、実際に販売しているスタッフの方に話を聞いてすぐに分かりました。それは本体の値段や、デザインそのものが原因ではなく、仕様と契約の内容に原因がありました。

このエアバッグ式ヘルメット、実は1度開くと車のエアバッグ同様元には戻りません。つまり、1ヘルメット1回きりの使用となります。

「えっ、じゃあ開いてしまったヘルメットを販売店に持って行くと直してくれるんですか?」

もちろんそうですよね?と言わんばかりの僕のテンションに対して、言いにくそうに「違うの、本当に一回こっきりの使用なの」と販売員さんが説明を続けます。

この製品は本体価格以外に250SEK/年の保険を支払う必要があります。利用者が保険を支払っている場合のみ、事故や間違い(事故ではないのに何かの衝撃で)でエアバッグが開くと、店舗で新品に実物交換をしてくれるのだとか。

つまり品自体の金額以外に、毎年製品に対しての保険料がかかり、それを払わなければエアバッグが作動した際また新品の購入が必要になります。

このシステムに対しては、怪訝そうなリアクションを取る人達が圧倒的に多かった印象です。そして恐らくこのシステムに抵抗を感じる人が多いことが、いまいちこの素晴らしい製品がスウェーデン社会に根付ききれていない理由かと感じました。

僕の周りでは、自転車事故(自損)で頭を打ち亡くなったり(知人)、同じく自転車事故で頭を打ち脳に深刻なダメージを負った(友人の父親)など、通勤途中の自転車事故で大変な思いをした方々が多数います。

ですので、この製品がもっと改良され、社会に浸透すればと個人的には感じています。Hövding の今後に期待です。

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