先日ストックホルム KTH にあるコワーキングスペース Openlab を紹介した際、僕がヨーロッパ各国で開催される大きなスタートアップイベントに Design Thinking コーチとして参加する機会があったことに触れました。

本日はそのイベントの模様をお伝えしたいと思います。

ちなみに先に申し上げると、このイベントは参加費無料、昼食、豪華夕食、飲み物、おやつ支給、さらに最後のピッチで優勝すると商品、ならびに自治体と共同プロジェクトに参加可能と、ある意味至れり尽くせりな催し物となっております。

現地の学生や自治体の職員、大学の研究者や教授、さらにはメディアなども集まる大きなイベントですので、個人的には最も参加をお勧めするイベントの1つです(運営は各国全て英語です)。

EIT とは!?

まず EIT とは European Institute of Innovation and Technology の略称で、ハンガリーのブダペストに本部を構える R&D 機関です。

ヨーロッパ中の若い人々にアントレプレナーシップとイノベーションを促進するため、様々な教育機関、研究開発機関、大企業等とコラボしイベントを開催しています。

 

EIT 自身も取り組むチャレンジごとにユニットを分け、EIT Climate-KIC、 EIT Digital、 EIT Food、 EIT Health、 EIT InnoEnergy、EIT Raw Materials と、その領域は多岐に渡ります。

各カテゴリー毎にコラボレーションする組織や人は異なり、結果非常に多くの人達がこれまで EIT のプロジェクトに関わってきました。

スウェーデンでの EIT の活動

スウェーデンでは3つの大学(カロリンスカ研究所、ウプサラ大学、チャルマース工科大学)が EIT と共同で地元企業とともにイベントを開催します。

僕が参加したイベントというのが EIT の中でも最も大きなイベントの1つである EIT Health Innovation Day でした。こちらは僕が住んでいたウプサラで開催され、1,000人を超える人達が当日会場に集まり、非常に白熱したイベントとなりました。

EIT Health は50のコアパートナーと90のアソシエイトパートナーから成る、ヨーロッパ市民の生活の質の向上とヘルスケアシステムの持続可能性の向上を目指し活動する大連合組織になります。

健康な生活の推進、活動的な高齢化のサポート、医療の改善、を最も重要な課題と捉え、それぞれの問題に取り組んでいます。

EIT Health Innovation Day

EIT Health とウプサラ大学は毎年同校の学生、現地の人々を EIT サポーターとして招待し、双方がコミュニケーションを図りながら起業家的精神を高める機会(ワークショップ)を設けています。

それが EIT Health Innovation Day です。

このイベントは、ローカルの人達が実際に直面している健康問題や医療制度の弊害などをケースをとして使い、その解決方法や斬新なアプローチの方法をゼロベースで見つけることをゴールとしています。

ですので、ただのお勉強会とは違います。実際、当日は多くの健康問題を抱えた老人や、移民(難民)という立場が弊害となり十分なケアが受けられていない人々が会場に招かれ意見交換をしました。

“The overall goal of the EIT Health Innovation day is part of a long-term strategy to increase the interaction between academic education and the public sector and industry. To stimulate early engagement in health-related issues – regardless study subjects – participating students will enhance their awareness of needs for global development. Public and private partners are also invited to participate and interact by presenting health-related needs, coaching and future work experience opportunities.”

それもそのはず、EIT Health Innovation Day では参加者は Design Thinking メソッド をソリューション発見のためのツールとして使い(だからその Design Thinking が何なのかちゃんと説明しろツってんだろーが!!!)、このメソッドのミソが様々な形でプロブレムホルダーから聞き取り調査を行なう所にあります。

 

Design Thinking は5ステップに分かれ、問題認識〜プロトタイプの作成、テストと実践的な問題解決ツール。

Interdisciplinary problem-solving(学術的な問題解決)を目指しながらも机上の空論で終わらないために非常に多くの時間をヒアリングに費やします。

問題のボトムラインはいったい何なのか!?参加者は考えに考え抜くのです。

チャレンジ

当日のチャレンジはA〜D4つの異なる課題に分かれ、各チーム(4〜5人)与えられた1つの課題解決に取り組みます。こちらが僕が参加した時の課題です。

Challenge A
・How can teens be motivated to break their soda habit?
Your challenge today is to use a Design thinking inspired approach to first understand what motivates teenagers to change a behavior and then use this knowledge to come up with one idea that can be used by teens to break a soda habit?

Challenge B
・How might senior citizen’s opportunities increase for quality time together with people they like to hang out with?
Your challenge today is to use a Design thinking inspired approach to first understand how and what the challenges are for elderly to meet people they like. Your task will then be to use this knowledge to come up with one solution aimed to increase their opportunity to meet.

Challenge C
・How can a forum be created to increase the chances of getting a job interview if you live with a disability?
Your challenge today is to use a design thinking inspired approach to first understand how a person living with a physical disability can create new networks and then use this knowledge to come up with one idea that can be used to make a new forum where people with different abilities can get personal tips about possible jobs for them to apply for.

Challenge D
・How can immigrant’s opportunities increase to find people they like to hang out with that knows the Swedish culture?
Your challenge today is to use a design thinking inspired approach to first understand what are the opportunities and challenges for an immigrant to make new friends that know the Swedish culture. Your task will then be to use this knowledge to come up with one idea enabling immigrants to make friends that they like to hang out with and that can introduce them to the Swedish culture.

実践

この Innovation Day 当日は、限られた時間の中で計画通りプロセスを実行していかなければならないので、丸一日朝から版まで本当に大忙しです。

Design Thinking の一番タフな所はどんな状況であれ、時間が来れば次のステップに絶対進まなければなりません。例え議論の途中でもう少しでいい考えが思い浮かび上がりそうといえどもです。

少し遅れればその遅れた分が後々プロトタイプ作成の時間をロスさせ、アイディアが現実的に機能するかを試すテスト工程にまで影響を及ぼします。

ですので主催者側はコーチを含めかなりシビアに進めて行きます。

僕たちコーチ陣は事前トレーニングで「とにかくチームのケツ叩くのよ、ケツ!馬のようによ!」と何度も何度も言われました。

時間が来ると大声で叫ばれる。100m先にいるかの如く叫ばれる。

朝9時から夕方5時までタイムキーパーやコーチに行動を監視され、参加者は本当に疲れたと思います。

ですが、管理する側もなかなか大変なのです。僕は朝6時半会場入りで現場のセッティングから当日の最終打ち合わせ、受付となぜか主催者達より多忙でした。

「ありがとう〜♡」と何度もハグされそれはそれで良かったですが(照)。

そして各チームはそれぞれが出し合ったアイディアをもとにプロトタイプ(試作品)を作成し、ピッチ(発表)します。

参加人数が多いこともあり1チームずつ発表する機会は設けられないので、ピッチは各チーム動画を撮影し専用 Facebook ページにハッシュタグ付けで投稿します。

後ほど1時間以上かけて審査員優勝チームを決めます。この審査員のメンバーも地元の人や、企業、大学、自治体から厳選して選抜し彼らに判断を委ねます。

そしてその大事な審査チーム名簿の中になぜか僕の名前もあり、結果的に Design Thinking コーチ兼審査員という謎のアジア人として最後は紹介されました。実は会場セッティングまで携わった職人でもあるんですよ、という言葉は飲み込んでおきました。

さて、結果報告ですが僕が担当させてもらったチームは見事チャレンジ B 部門で優勝し、後日談としてウプサラの自治体と共同でプロジェクトに数ヶ月間取り組んだそうです。優勝プレゼントももらいみんなご満悦です。

余談ですが、ピッチされたソリューションの90%以上が、デジタルプラットフォーム(アプリ)を設けて、サービス提供者と困っているユーザーを繋ぐというものでした。

プラットフォーマー型ビジネスは確かにトレンドなんですが、みんながみんなそれを思いついて解決策として発表している所に「なんだかな〜」と正直感じてしまいました。

いや、いいんですよそれがトレンディなのは間違いないんで。ただ、世の中プラットフォームだらけでそれで溢れかえってるよなと個人的に違和感のようなものを凄く感じている時でした。すみません、うまく説明出来ないんですが。

何はともあれ、みんな非常に忙しい充実した1日を過ごし豪華なケータリング(夕食)でイベントは締めくくられました。無論、当日は爆睡でした。

EIT Health Innovation Day は現在年次イベントとなっています。皆さんもスウェーデンに行かれた際は参加してみてはいかがでしょうか?